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すぐにでもというわけではないが

著:ジェームズ・ワイアット

発表はなされた、激情の嵐は弱まりつつあり、興奮が始まろうとしている。今から7ヶ月後、君とプレイヤーはぴかぴかの新しいプレイヤーズ・ハンドブックを前に、一新されたルールを読み込み、何ができるかを理解しようとするだろう。

君が第4版のキャンペーンを構想するために、5月まで待つ必要はない。新版の発売は君が新しいやり方を切り拓く良い機会で、新しい世界と新しい冒険が君を待ち受けている。目の前のプレイを続けるのはもちろんだが、5月からのプレイについて君が思いをはせるというのもけして早計ではない。

それが、このコラムのすべてである。今から数ヶ月、私は第4版で新しいキャンペーンを始めることにあたっての考えを公開しながら、私が使うキャンペーン世界を構築していこうと思う。私は君を我々が世界創造とキャンペーン構築について集めた洞察の世界へといざなおう。

冒険の余地

世界が暗黒のとばりで覆われていると想像しよう――果てなく広がる手つかずの広野に人間とドワーフの手になる文明や、ティーフリングの古代帝国や偉大なるエルフ王国の朽ちた遺跡が点在している。

そうした暗黒のただ中、文明のともしびは夜空で頼りなさげに輝く星明かりのように離れ、ばらばらに散らばっている。そこここに偉大な都市国家や強大な男爵領を見つけることもできるだろうが、君が出会うほとんどは開拓者の町や農民や職人が闇から身を護るため肩を寄せ合う村である。

君のプレイヤー・キャラクターはそういう土地の光として生を享ける。

この世界は広大な暗黒のただ中にあり、文明が存在するのは弱くかぼそい光の点、という考えは、D&D第4版の根幹をなす考えである。だがこれは全てのキャンペーンをホラー・ゲームや暗黒への恐怖を含んだものに帰ることを目的にしたものではない。そうではなく、これは冒険するための空間を与えるものである。

それは私をキャンペーン・セッティングを世界として構築すること、なお正確に表現するならば大陸を、沼と森と国を描く境界線でマイルのマス目を埋め尽くす作業へといざなっている。そして、私はそうした地図を見てモンスターは沼に住んでいて森にはエルフがいる、さらにこの国とあの国は仲が悪いと語ることができると確信している。それは私が中学校の時からやっていたことで、グレイホークや初期のフォーゴトン・レルムから影響を受けていた。TSRは強烈なキャンペーン用世界を生み出してきた――まさに今ウィザーズ・オブ・ザ・コーストがしているように――そして私の中からわき上がった欲求は私もあのように緻密な世界を創造したいというものだった。

そこにひそむ罠は、君が大きな規模でものを考えているとき、それらの全てはPCから乖離しているということである。

もし私が国同士の全面的な衝突をひかえた沸騰寸前の国境線にPCを訪れさせるとして、そこには冒険する余地を発見できるだろう。それはとてもいかしたキャンペーンになるだろう。おそらく土地の人々は彼らをどちらの国民とも認めないだろうし、彼らは戦争に対して憤りを感じるが、ひっそりと暮らす多くの移民もいる。これは大いに楽しみとなりうる。

しかしこれは私が大きな地図の非常から小さな点へ作業の視点を切り替えただけにすぎない。一度私がキャンペーンを始めれば、森とエルフや沼とモンスターは重要でなくなり、少なくともキャンペーンの規模がそれらを含むほど拡大するまで顧みられることはない。短期的に考えて、私は大陸のもう半分について思いをまどわせるより、むしろ国境の都市を肉付けすることやそこでの冒険を考えることに時間を割く方が良いと考えている。

もし君が狭い範囲から始めるなら、君はその小さな範囲で冒険のための空間を作ろう。それは100マイル離れた沼に住むモンスターではなく、住まいのそばで君の生活をおびやかす危険についてである。第4版で、危険は大きく安全な場所は小さくなった。冒険はけして遠くにあるものではない。

隗より始めよ!

傍注:カカラという名前は確か1年ほど前にふと浮かんだ名前で、私はそれを書きとめておいた。そして私はこうして使う機会に恵まれた! いい考えを思いついたとき、いざという時君がそれを見つけられる場所に書き留めておくのは、役に立つ習慣である。

カカラは広大な暗黒の中にある小さなまたたきのひとつだが、それは消え入りそうなロウソクというよりは燃えるかがり火である。暗黒は広がり、小さな村の住人は周辺にある壁で護られた場所を志向し、安全に対するせめてもの希望を町の中心を囲んだ貧弱な木の柵に頼ろうとするのである。

君のキャンペーンが始まる場所は、キャラクターたちが育った場所かもしれない。周辺の農村から彼らを引き寄せた都市かもしれない。または悪い男爵の城で、彼らは男爵領の隣国で捕らえられ、地下牢に投獄されたところでキャンペーンが始まり、まさに冒険の渦中へ放り込まれているのかもしれない。君がたとえ何を選んだとしても、大切なことはキャラクターたちに基本的な開始地点――彼ら全員が出会い、そして彼らが自分の命を他の仲間に預けることを決める場所を提供することである。

私のキャンペーンでは、私はプレイヤーたちに彼らがお互いに長年つきあいがあり、過去に何らかの因縁があって欲しいと考える。そのため、私は最初の案。全てのキャラクターが育った土地を採用した。私は、それをカカラ村と呼ぶ。

種族の居場所

冒険の余地を作る前に、光のまたたきという概念は私に典型的な人間の農村に多くの異種族が住んでいる理由を与えてくれた。まず、私はプレイヤーズ・ハンドブックで種族の章をめくり、プレイヤーがたとえどの種族を選んでも彼の設定を作る物語があるようにすることを考えた。

住人のほとんどは人間である。プレイヤーズ・ハンドブックは現在の暗黒時代直前にあった最後の大帝国が人間のものであったと示唆しており、私にはまだそれを変更する理由がない。住人は人間のみではないが、人間が指導者であるという合意は形成されている。カカラに住む人間は多くが農民で、それは村の土地が柵の外に広がっていることを表している。村にあるいくつかの家々が壁で守られていないように――それら農園は攻撃に弱い。それは、冒険のきっかけを作るのに役立つ。

私は少数の遠い森にエルフを固定したくはない。エルフの住むそういう森があったとしても、かつて敵が焼いたのだ――時が過ぎてハーフ・エルフが街で誕生するほどの昔に。エルフはカカラに近い、小さく静かな森へ移り住み、彼らの天幕と放浪する一団は散在する農園と同じように村の一部となっている。私は誰が森を焼いたかまだ決めていない。私はそれが戻ってくるとした。

エラドリンはプレイヤーズ・ハンドブックに追加された新しい種族である。彼らはエルフと近しい存在だが、彼らは妖精郷(Feywild)に住んでいることが多い。私はまだ彼らに対して私が何を求めているのかわからない。私はとりあえずエルフが住んでいた森が物質界と妖精郷で行き来しやすい“薄い場所”とし、エラドリンの街がエルフが住む場所の近くにあったとした。妖精郷は無傷だが、幾人かのエラドリンは共に暮らしていたエルフたちと旅に出た。

ふむむむ……私はこの設定がいいと思えない。恐らく、妖精郷も無傷ではないだろう。私は敵がたとえ森を燃やしてでも妖精郷を侵略してエラドリンを追い出したとした。あるいは妖精郷から敵が来て、エラドリンを物質界へと追い出したのである。私が敵のことについてより考える準備ができたなら再考することにする。ドワーフの商人と職人は何人かが村に定住しており、他にも商隊が時々やってくる。道を行く商隊は盗賊や怪物のうまい獲物で――さらに冒険のきっかけが増える!

ハーフリングの集団は、エルフに似ており、危険を避けてカカラの近くへやってきた――河に現れる脅威から追い立てられて。彼らは小船をたくさんつなげて暮らしており、危険があまりに迫ってくるなら錨を上げて出帆する準備が整っている。

私は新しくプレイヤーズ・ハンドブックで追加されるティーフリングという種族が好きだが、私はかれらがカカラに調和しているとはみえない。私はプレイヤーたちにティーフリングを作ってはいけないと告げると思う――キャンペーンが進み、彼らがより偏見の無い地域に移動するなら、おそらく私は彼らの死んだキャラクターを埋め合わせるためにティーフリングを導入する機会を与えるだろう。

人間、エルフ、エラドリン、ドワーフ、そしてハーフリングはカカラを良い人種混在社会にする。しかしここにもうひとつ種族が欲しい。シフターはどうだろう? 彼らはエベロンの世界設定で私が大好きな種族で、彼らを私のゲームで使いたい。彼らはプレイヤーズ・ハンドブックには掲載されていないが、モンスター・マニュアルに掲載されているので、プレイヤーたちが必要とするならシフターのキャラクターを作ることができる。私は彼らシフターがカカラの平地を放浪する民で、昔から村の人間は農園の拡張についてシフターと対立していたと説明するだろう。ここの要点は、いくらかのシフターはまだ荒野に住んでいるが、彼らは悪である。村に住む者たちはほとんど順応している。

私が今まで行った全ての作業はプレイヤーズ・ハンドブックで種族の章をめくってそれぞれの種族について私の新しいキャンペーンでどうプレイして欲しいか考えることだった。シフターはそこにおらずティーフリングはいたのだが、私は好きな種族を導入して現在役割を果たせないひとつを外すため想像力を少々利用した。

このわかりやすい初期設定は物語に関する多くのひらめきを生み出し、私は村についてかなりはっきりした考えを得るに至った。エルフの苦境は世界の危険とこの小さな光のまたたきを強調しているが、私はまだどんな悪の力が彼らの故郷を破壊したかを決めていないのだった。

村の中心

私はカカラの地図を必要としていない――十字路の周りに発展する村という簡潔な考えで今のところ充分である。木の柵が町の中心を囲み、迫りくる自然からか弱い者たちを護っている。

町の中ほどには寄り合い所がある――確かに、それは古典的なD&Dで酒場として使われているような建物だが、村人がおおごとを話し合うために町議会を開いて話し合うための場所でもある。

他には寺院が主な集会場で、命の折々に訪れる喜びと悲しみを分かち合うために人々は連れ立って訪れる。私は寺院と村の信仰的生活について考える必要がある。

プレイヤーズ・ハンドブックで別の章を開き、私は神格の一覧を見つける。私がバハムートの権能に注目するのにそう時間はかからなかった。彼は正義、守護、そして名誉の神である。これらの人々は迫りくる暗黒を恐れているため、私は彼らが守護を求めてバハムートに祈りを捧げるのは自然なことだと思える。私はバハムートの祭壇が、寺院の中心を占めているとした。

だが、それだけで終わることはない。さまざまな多神教の信仰において、人々はその時々で異なることのために異なる神に祈りを捧げて供物を供える。太陽神ペイロアは農業において重要な神である。彼は寺院のひとつのそでに聖堂を持つ。よりふさわしい日、彼はカカラでバハムートより重要な神になる。実際、住人の中にはペイロアを寺院の中心に据えるためバハムートの神官によくない感情を持つ者がいるかもしれない。

この物語はなかなか面白くなる可能性がある――しかし私は今すぐそうなるかはわからない。私はそれがキャンペーンを進ませないと――かなり後にならないと花を咲かせない種だと考える。

バハムートはしばしばモラディンやコードと緊密に関係している――彼ら3柱の神は星幽の封土(Astral Dominion)を共有しているといわれており、それは天界山セレスティアと呼ばれている。そういうわけでこれらの神も寺院に聖堂を持っている。これで今のところ充分だろう――4柱の重要な神格は、彼らを熱狂的に支持する者たちの関係という物語の余地を持っている。

最初の円を描く

私は村という出発点から、円を満たしていく――私とプレイヤーがキャラクターと町の住人が持つのと同程度の外界に関する知識を伝える必要がある。これらは世界旅行者用ではない――彼らは自分たちの村、他の町に続く道、ハーフリングが来た河、そして燃やされた森を知っている。そしてそれは私が今知っておくべき全てである。こうして私はカカラを中心にして地図を描く。私はそこが十字路であるとしたので、少なくとも3本の道が出ていることをいくらか考えにおく。大都市は北に向けられた“シルヴァリームーン市へ”という矢印として地図に表される。私はこの名前をフォーゴトン・レルムからいただいているが、PC たちがそこへ向かう時、私は名前意外のものもいただくかもしれない。私はシルヴァリームーン市が危険な自然の中にある都市の良い例として好きなのである。

南へ向かう道は“塔見の町へ”これは最も近くにある町だ。この名前(何も無いところから創造した)はまだあるのか崩れているのかは不明だが、神秘的で未踏の塔が特徴的な古代遺跡があるのかもしれないし近くなのかもしれないことを示唆している。

そう、私はそれが好きだ。私はPCたちが時間をおかず塔見の町にある塔を調べると思っている。

ハーフリングは河に住んでいる。私は何が北西の川上にあるか(ハーフリングが移住しなければならなかったことを除いて)また河がどこまで流れているかを決めていない――おそらく南東には大きな湖か河口があるのだろう。それは『ホビットの冒険』にある湖の町を想起させ、それはいただきがいのあるもうひとつのいかした物件かもしれない。こうして第3の道は川沿いに走り、湖の町を指す矢印が描かれた。

地図で最後に手を入れるべきものは、西へ向かう古い道である。幾世紀を経て舗道のれんがは壊れすり切れ、隙間からは牧草や雑草が茂っている。これも、同じように地図の端へ矢印を描き“苦しみ峠へ”と書く。なぜか? それは私の息子がある日この名前を思いつき、私がそれをいたく気に入ったからだ。

さあこれが私のキャンペーン・セッティング。

いや、それは違う。これは始まりにすぎない。これはプレイヤーたちが第4版で最初に訪れる土地――初めての冒険をできたてのキャラクターが行い英雄への第一歩を踏み出す場所だ。そしてそれはあることをほのめかしている。塔見の町、湖の町、苦しみ峠、燃やされた森、シルヴァリームーン市。

ただひとつ足りないものはダンジョンである。

カカラ谷

カカラという小さな村は近くのダンジョンにおびえている――それはPCが英雄になるという近くにある要請にこたえるため必要なのである。暗黒は迫り、英雄たちはそれを押し戻さなければならない。

そこで燃やされた森の端(私はもうすぐ名前をつけねばならないだろう)の端に村の名を取って名づけられた裂け目が開かれる。私はカカラ谷が地面の割れた深淵であると想像し、開拓者が最初に農園を開拓する時に村にその名を与えたとげの多い雑草を捨てた場所とした。

カカラ谷は森が燃えた時に解き放たれた。私はなぜそうなったか考えていないが、割と最近のこととしたい――危険と悪が小さな村に迫っている最新の証拠なのだ。そしてカカラ谷が解き放たれたとき、それはダンジョン――長い間埋まっていた古代の街か城砦も明らかにした。いばらを伝って裂け目の底にたどり着くことで、キャラクターは遺跡に近づき、そこに財宝が無いか探索することができる。後の参考のために書いておくと、より深い場所へと向かう裂け目があるかもしれない、もしかしたら、キャンペーンが進むことでいくつかの事件が起こりより裂け目が深くなるかもしれない。

これはPCたちが最初の数レベルを得るためのダンジョンで、彼らを成長させて新進気鋭の英雄へと成すためにある。

次回は、カカラ谷に広がるダンジョンについて!

著者について

ジェームズ・ワイアットはD&Dのリード・ストーリー・デザイナーにしてD&D第4版リード・デザイナーのひとりである。彼は7年以上ウィザーズ・オヴ・コースト社に勤め、『エベロン・ワールドガイド』『City of the Spider Queen』、そして『Oriental Adventures』といった受賞暦のある世界設定や冒険シナリオの執筆や共同執筆に携わった。彼の最も新しい仕事は『Expedition to Castle Ravenloft』『Cormyr: The Tearing of the Weave』そして、『The Forge of War』である。彼の2作目となるエベロンの小説、『Storm Dragon』は、今月発売される。

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