先月、私はキャンペーンの情報を君のプレイヤーに渡す方法について話し、プレイヤー用ハンドアウトを作りプレイヤー用ノートを用意した。今月、私は問題についてスクリーンの向こう側にいる、君用のノートとキャンペーンを管理するアイデアについて見ていこうと思う。
前回プレイヤー用ノートについて触れたとき、物理的に存在するノートはたいへん目的に見合ったものであると指摘したが、これはゲームを行なうテーブルでプレイヤーが簡単に見られるからである。同じことが君のDM用ノートについてもいえる。ゲームを行なうときにコンピュータを使うのは、恐らくプレイヤーよりDMの方が多いだろうし、DM用ノートを電子化して管理を楽にするためコンピュータをテーブルに持ち込むのは効率的だ。しかし君がプレイヤーとの間をボール紙製のDMスクリーンだけで隔てることを好むDM(私のように)なら、君は恐らくさまざまな種類のものを使う――君はノートをコンピュータで管理するがテーブルでは印刷したもの――だろう。
簡単な例をあげてみる。君はプレイヤーに配るキャンペーン・ハンドアウトを準備した。君が自分で使う分も印刷し、それをDM用ノート最初のページにする。君がキャンペーンに関するメモをしたら、どんなものでもそれらを入力し、印刷し、ノートに貼りつける。君のために最も役立つ形でメモを整理――君はNPCについての項目を、別々の土地ごとの項目で、NPC、地図、その他そこに関連する項目で整理してもよい――する。君はキャンペーンのあらすじとして1、2ページの項目を作り(君はそこを仕切りページにしたいかもしれない)、君が自作するにしろ、出版されているものを買うにしろ、この雑誌をダウンロードするにしろ、それぞれの冒険についての項目を作る。
近々行なう冒険についての項目を作ることは君が冒険について思いついたことのためにもすぐに使えるよい考えである(それは君のキャンペーンに反映されるだろうから)。こうして、君は冒険についての考えを肉付けし、それぞれの項目に書きこめる。君のノートには、キャンペーンに関係するようなそうでないような思いつきを書くため、アイデア帳としての項目を必ず作っておくこと。君の新しい冒険や新しいキャンペーンのアイデアが煮詰まったとき、まずそのアイデア帳を読むのである。
君のやり方次第だが、DM用ノートの一部から全部はコンピュータから印刷したものである。君のコンピュータにあるそれらファイルを物理的なノートを管理するように管理してみよう。“DM用ノート”のディレクトリに、私ならたとえば、子ディレクトリとして“キャンペーン・ハンドアウト”、“カカラ村”、“カカラ谷その1”、“紅蓮山の頂”、“アイデア帳”と作るだろう。私が入力したもの、ダウンロードしたもの、画像処理ソフトで描いたものなどはすべて適当なディレクトリに保存できる。
同じようにコンピュータのディレクトリ的な手法を君の物理的なDM用ノートに使うことは役に立ちそうである。デイヴ・ヌーナンは“ノート”として持ち運べるファイル・ボックスとフォルダを使い、彼のキャンペーンに関する情報をPCのフォルダ的に管理している。この容器の素晴らしいところはノートに挟みづらい棒状のもの、カード(PCのパワーや魔法のアイテム用)、はたまたアクション・ポイント記録用のポーカー・チップを入れられるということである。それは、ゲーム用のミニチュアやダンジョン・タイルを持ってくるための素晴らしいやり方でもある。
今私のコンピュータにある古いキャンペーンのファイルを見ると、私はそれを整理したいと思ってしまう。それどころか私の物理的、電子的ノートはファイルの混沌とした集合体――いくつかの名前は日付まで一致し、いくつかはまとめられ、またいくつかは無造作に物理的にも仮想的にも空間を浪費していた。これが私のコンピュータにある古いエベロンのキャンペーン用ディレクトリで、管理されていない例である。
これは、私が初めてきちんとした管理を試みたカカラのキャンペーン用ファイルとフォルダで、よりよく見える。
ワープロを使ってきれいな挿絵(君自身が描くにしろインターネットで検索してくるにしろ)を追加するなどして、DM用ノートを『フォーゴトン・レルム・ワールドガイド』風の美しい体裁にすることは魅力的だ。その魅力は理解できる、が――中学生の頃からそんなことをやっていて、今では仕事にしている私を信じて欲しい。しかし、それは必ずしも進行中のキャンペーンにとって最良の情報管理方法であるとはいえないのである。
まず、そのやり方は君がキャンペーンを運営するにあたり、疲れてしまうほどの作業を強いるだろう。君はキャンペーン世界のすべてを詳細に記述したページを必要とせず、君が必要とすべきはプレイヤーが活動しそうな地域を案内するための最小限のメモである。君が世界という大きな絵を描くのに疲れてプレイヤーがそこで行なう冒険を考慮しなくなってしまうのはあまりにたやすいため、キャンペーンのあらすじから始めるのがよい。
さらに、君が作るキャンペーンの詳細な経過を楽に追い、君がゲームの進行にそなえるためにも、君のDM用ノートは絶対に君自身が情報を管理しなければならない。印刷された本は君の目的に見合うものだが、要点が見た目の美しさ――綺麗な商品を作ってプレイヤーに見せ、他と共有し、インターネットでPDFとして売ることさえできる――に移ってしまう。基本的に、DM用ノートは君が思いついたときに入力した大量の殴り書き――キャンペーンにおける種族からNPCの名前まで――を、君が探しやすいように管理したものである。そこではは電子的な道具の力が本当に輝く。
ワープロはこの情報管理の作業に最適化することができる。もちろん君はそういう用途のプログラムを探すこともできる。しかしインターネットで君が検索して望んだ結果を直接クリックするように、クリックして君の自信作であるキャンペーン・ガイドから全ての“ドラゴンボーン”という単語を探したり、検索一覧に前後の文章と表示させるためにはどうすればいいだろうか?
君がワープロを使うなら、ページレイアウト表示よりアウトラインかノート表示(Microsoft Wordのような)がよいと思う。君はこの文書を出版への準備用ではなく、君のノートだと考えるように。アウトラインやノート表示はより簡単に君のメモに居場所を与えることができ、折りたたみや展開を活用すれば君はメモを挿入したい項目へ素早くたどり着ける。私がキャンペーン用ノートとしてMicrosoft Wordを使う例は以下の通り。
注目して欲しいのは私が先月のハンドアウトにハイパーリンクを張っていることだ。
アウトラインやノート専用のプログラムはよりよい作業ができる。私は家でMacintoshを使って作業をするので、Windowsのソフトについて明るくないが、私は下にあるようオムニアウトライナーを使っている。
見出しが表示されている行の左にある小さなアイコンはそこに内容が入力されていることを表わし、アイテムをクリックすれば下のウィンドウに出現する。画面の例では、私がちょうど“ドラゴンボーン”を検索していたため、下の文章ではカーラヴァスが強調表示されている。
私はカカラのキャンペーンを実際にうまく始め(近日中に開始するのは本当)るために、文章を大量にコピーして他の項目に貼り付け整理するなど、さまざまな方法でこれまでの記事で作ってきた情報を組織化せねばならない。ここで、よりふさわしく楽な方法を取るか無理やり働くかの選択が出てくる。私はGoogleグループでカカラのキャンペーン用グループを作成した。私は沢山のページを作ってダンジョン職人で連載してきた文章を投稿した。これで私はそれらのファイル全てから、ドラゴンボーンに関しての言及を探すことができる。
結局のところ私は情報をより整理したかったのだが、Googleグループによる挑戦はうまく次の話題に繋げられる。
君のキャンペーンに関する情報をインターネットに保管することは君自身のコンピュータや物理的なノートを確実に上回るふたつの利点を得る。ひとつ、君はどこにいようと――仕事の合間や学校の中休みに――それを見ることができる。ふたつ、君が準備した方法にしたがえば、君のプレイヤーはそれを見ることができる。
私は例としてGoogleグループを使っているが、これはけして私がGoogleを宣伝しているわけではない――同じような無料のツールはインターネット上に多くある――ことに注意して欲しい。
君がGoogleグループでウェブ・ページを作るとき、君は君だけがページを見られるようにも、君のグループに所属するメンバーに見られるようにも、誰でもページが見られるようにも設定することができる。私が作成したキャンペーンについてのページ(これらの記事として)全ては、それらを私だけが見られるように設定した。しかし先月作ったキャンペーン・ハンドアウトの情報を載せたページは、グループのメンバーも見られるように設定した。私は編集の権限も同じように設定できるので――たとえば、私がキャンペーンのプレイヤー・キャラクターについてのページを作ったなら、プレイヤーがそのページを編集できるように設定しておくことができる。
インターネット・グループには他にも私とプレイヤーの交流を助けて共同作業を簡単にするツールがもっとたくさん揃っている。誰かメールを送ればキャンペーンの参加者全員に配信されるメール・アドレスがある。整形したPDF版のキャンペーン・ハンドアウトを、画像やその他プレイヤーが使うものなどと一緒に保存してダウンロードすることができる。さらに冒険の記録を書き込める掲示板がある。私(や許可したプレイヤー)はセッションのあらましを入力し、他のプレイヤーはコメントやさらなる補足をつけることができる。Googleグループの場合、私はグループのメンバーにメールを送るため、掲示板はあまり有効ではないかもしれない。ほかにはブログで冒険を記録するなら、プレイヤーへのコメント――君や記録担当者が書いた下に、面白い記録や引用をみんなが書き加える――を許可すれば、それは本当に理想的なものになる(プレイヤーが持つキャラクターのひとりを冒険の視点人物にすれば効果的で面白く、特にキャラクターがひねくれ者であったり他のプレイヤー・キャラクターに対する確固とした意見を持っているとよい。他のプレイヤーがキャラクターとしてのコメントを書き込むなら、それはブログを活発にするのを助ける!)。
この話題で留意すべきはふたつ。ひとつ、君が多くのDMと同じであるならばプレイヤーの心をキャンペーンのセッションから離れた場所で掴むのは難しいと気づくだろう。それはDMとしての君が無能なのではなく、おそらくゲームのテーブルを囲んでいない間のプレイヤーは生活や色々なことを考えるのに忙しいからである。つまりはかなり静かなGoogleグループになるということだ。
ふたつ、グループなどのツールは君が行なう情報管理の補助が主な目的であることを忘れてはいけない。君がどんなツールを使っても、DMスクリーンの後ろにコンピュータを置くにしろコンピュータの中身を印刷して物理的なノートとして綴じるにしろ、その結果をテーブルの上で簡単に見られるようににすること。理想をいえば、それはゲームの最中に君が情報を(物理的でも仮想的でも)ノートから見つけ出すことと書き込むことのどちらも楽にできなければいけない。また、君はセッション中に物理的なノートの端に走り書きをしたらセッションの終了後、ゲーム中に開いている電子的なファイルかウェブ・ページに書き込むとよい。
D&Dのキャンペーンで時間の経過を追うことは面倒で、君がほとんど無視することも、君のキャンペーン世界をより現実的に見せる楽しいものにもできる。君が時間の流れを厳格に管理することは重要ではない。なぜならそれは私を簡単に混乱させ、ゲーム運営上好きではない部分だからだ。しかし君が時間の流れは現実味を味わわせる根っこの部分にしたいならば少々簡単な方法がある。
ところで、君の世界が不規則な長さを持つ12ヶ月で1年が365日だった場合、キャンペーンで大変簡単に時間の経過を追える。月と曜日の名前を変えれば、それが不合理だろうが地球と同じようなカレンダーで君の世界に別世界の印象を与え、君とプレイヤーは君が自分の世界で使うために作った不合理なカレンダーを使うより格段に容易なものとなる。
最も簡単なものは冒険が始まった日を記録しておいて、キャラクターが長い休みを取ったときその下に目印を書き、冒険が終わったときに経過を総計して終了した日を記録する。君は次の冒険を始めるとき、その開始する日付が最後に冒険した日付より後であると確認すること。それは君がプレイヤーに季節の移り変わりをきちんと描写できるように行なうべき全てである。
君はカレンダー――現実世界のカレンダーか、君の世界に合うよう作ったカレンダーのどちらか――を印刷してもよい。その上で君は、キャラクターが過ごした日々――1週間のうち3〜4日に『苦しみ峠へ行く』、その翌日には『苦峠遭遇1、2、6、5』――を書き込むかもしれない。
君は紙にでも電子文書でも、文章を書き連ねることで同じような目的を果たすことができる。私はこの方法を小説で使ったので、例は『Storm Dragon』の作業ファイルである。
王国暦999年イール月12日:
(朝)ダーグーンへテレポート、物資購入
リエンネは飛空艇でストームホームを去る。
(昼)パルール・ダールへテレポートして探索、ハルドレンと
ガヴェン死闘。ハルドレンはテレポートで脱出、ガヴェンとセンヤ残る。彼らは
コーランバーグへ向かう。彼らは約75マイル徒歩の必要あり、それは3、4
日かかる。
王国暦999年イール月13日:
(朝)ガヴェンとセンヤはストリームバンクに、ハルドレン
ガヴェンに出会う
(昼前)リエンネは飛空艇の上からモーンランドを見る
(夜)ガヴェンとセンヤは“予言書”について話す
王国暦999年イール月14日:
(朝)リエンネがヴァシロンドに到着
王国暦999年イール月17日:
(正午)ガヴェンとセンヤがコーランバーグに到着し
コーランバーグ→ゾーランバーグのライトニング・レイルに乗る。300マイル@時速30マイル10時間。
(午後11時)ガとセはゾーランバーグ到着、当局を避け
ゾーランバーグ→ステーンゲートに乗る。これは386マイル=13時間
王国暦999年イール月18日:
(正午)ステーンゲート着
スターリラスカー行きのライトニング・レイルは深夜着(12時)
私がこのように時間を記録する必要に迫られた主な原因は別々のキャラクターを世界の各地で同時に動かし、最終的に合流させる必要があったからである。それは君のグループに所属するプレイヤー・キャラクターたちが別々の場所に分かれるかどうかに関わらず、NPCたちの動きを調整するのならばそれはD&Dで時間を記録するための最もよい理由である。私が世界を共有したキャンペーンでDMのひとりだったとき、時間の経過を追うのは重要なことだった。長いゲーム内時間を使って冒険をしたキャラクターを使えないようにしたまま、同じ時間軸で起こった別の冒険を行なうため、各プレイヤーは複数のキャラクターを持っていた!
君が時間を記録するためにどんな方法を選んだとしても、簡単に参照できるよう日付順の記録を君のDM用ノートに記録するように。
以上が君のキャンペーンにおける情報を管理することに関して私が教えられることである。君はどうだろう? 何かつけ加えることはあるだろうか? 君はどうやって自分のノートを管理しているのだろう?
ジェームズ・ワイアットはD&Dのリード・ストーリー・デザイナーにしてD&D第4版リード・デザイナーのひとりである。彼は7年以上ウィザーズ・オヴ・コースト社に勤め、『エベロン・ワールドガイド』、『City of the Spider Queen』、そして『Oriental Adventures』といった受賞暦のある世界設定や冒険シナリオの執筆や共同執筆に携わった。彼の最も新しい仕事は『Expedition to Castle Ravenloft』、『Cormyr: The Tearing of the Weave』そして、『The Forge of War』である。ごく最近、彼は第4版の『ダンジョンマスターズ・ガイド』を執筆した。