未来と幻想の婚姻

D&Dのファンタジー世界に未来技術を導入するという発想は、ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズの歴史と同じくらい昔からある。アドバンスド・ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズのExpedition to the Barrier Peaks、ベーシックD&DのCity of the Gods、AD&D2版のTale of the Cometといったように、ファンタジー世界における未来技術の発見には長い歴史がある。そして今、d20 Future Techを使えばより簡単に未来技術を君がプレイするD&Dの世界に組み込むことができる。

ファンタジーに殴り込む未来技術には様々なものが考えられるが、この記事ではメカに注目していこう。この言葉に馴染が無い人に説明しておくと、“メカ”という言葉は日本のアニメーションから生まれ、単数から複数まで、武器や鎧から車両、宇宙船までおよそあらゆる装備のことを指す。d20 Futureで“メカ”といえば、d20 Futureとd20 Future Techでメカ操作ルールを設定された、巨大な搭乗型ロボットのことを指す。ほとんどのメカは武装した巨人のような姿だが、動物や神話の怪物になぞらえた姿のものもある。

君のPCたちをd20 Future Techからやってきたメカに対抗させるという誘惑は大きいだろうが、d20モダンとD&Dのルールは似ているというのに、ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズのキャンペーンにメカを導入するのは驚くほどやっかいだ。例えば、DMがぶつかりがちな最初の難問に、メカの脅威度をどう決定するかというものがある。残念ながら、この答えは「それはできない」だ。メカは生物でなく、人造としても扱われない。メカは非常に大きく、非常に強力な装備なのだ。ゆえに、それらは独自の脅威度を持たない。

では、メカが脅威度を持たないとしたら、君はどうやってそれを導入した遭遇のバランスを取るか？　鍵となるのはメカが魔法の鎧と変わりが無いということだ。鎧はそれ自体脅威度を持たないが、それを所持できる財産を持つNPCだけが手にしてい1る。DMGの表4-23(127ページ)を使うことで、君はNPCのレベルに応じた財産を決めることができる。

しかし、D&Dはgpという具象化された方法で財産を決めるが、d20モダンは購入難易度による財力判定という抽象化された方法になっている。メカの購入難易度をgpでの価格に変換することで、君は使いたいメカを最少で何レベルのNPCが買えるか知ることができる(これはあくまでどうにかこうにか使えるといった程度のものだ！)。この工程を行うことで君は遭遇のレベルを決定することができるだろう。簡単に2つのシステムを変換するには、以下の表を使ってくれ。

この最少NPCレベルはメカに乗っているパイロットのレベルを決定する目安に過ぎないことを忘れないで欲しい。また、パーティは1日平均4回の遭遇を突破できるべきであるということも忘れないで欲しい。したがって、PCたちに楽をして欲しくないなら、君はパーティの平均レベルより2から4高い遭遇レベルのメカ・パイロットを使用することを考えるかもしれない。

このルールを使えば、君は大抵のメカについて遭遇レベルを計算できる。表の最高値である購入難易度47以上のメカと遭遇した場合、その遭遇のレベルは最低でも20であるべきだ。

D&D史上最も有名なメカは、恐らく伝説のアーティファクトとして名高いザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーだろう。元々はAD&D1版のDungeon Master's Guideに収録されていたこれは、AD&D2版用にアップデートされてBook of Artifactsに収録された。D&D3.5版のためにアップデートされたザ・マイティ・サーヴァントのデータは以下の通りだ。

ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは漆黒の金属と暗い色の結晶、様々な繊維質の素材で構成された背の高い自動人形である。これは立った状態で9フィート以上の高さとおよそ5フィートの幅、6フィートの奥行きを持つ。その丸くたくましい外見は、(巨大な)ドワーフや重厚な甲虫を思い起こさせる。これには2本のずんぐりとした脚と、ひと組の垂れ下がった腕があり、不思議な動きで歩く。

内部の空間には人間2人ほどがゆったり座ることのできる席が設けられている。外部でも、5人までなら動いている時でも安全に休んでいることができる。当然ながら、この恐るべき存在はかなり重く、稼動中は恐ろしく騒がしい。重量はおよそ2トンである。

ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは、Barrier Peaksとその周辺にかつて住み、西の果てへと去った古代の神秘的な種族の遺産であると考えられている。ザ・マイティ・サーヴァントに用いられた技術と素材はどのような史書からも発見されておらず、彼らの造り主が何者であったか解明することを不可能にしている。

幾人かの賢者はその工法と外見から、今はもう絶えたドワーフの氏族の仕事であると推測しているが、ドワーフの賢者たちは(いささか不本意ながら、指摘せざるをえないところによると)種族の長い歴史のどこからもこの人造物に繋がるものが無かったことを指摘している。

全てのザ・マイティ・サーヴァントに関しての記録は、悪名高いリークオー将軍による発見から始まっている。リークオーはラム大将軍の部下だったが、この破壊の使者を手に入れることによって主君に叛旗を翻した。ザ・マイティ・サーヴァントの力を背景に、リークオーはラムに匹敵する軍を築いたのだ。

両軍は何度も衝突したが、いつも決め手を欠けるまま終わった。そしてついに、ラムとリークオーの最終決戦が行われ、強大なアーティファクトに秘められた力が解き放たれた。この戦いにより栄えていた王国は滅び、その跡には焼け焦げた砂漠ができたと伝えられている。この決戦でザ・マイティ・サーヴァントは破壊されたと多くの者は信じているが、強大な力の激突で発生した次元の裂け目に落ちたと信じる者たちもいる。

d20 Future Techの用語で説明すると、ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは大型サイズのメカで、以下のデータを持つ。

ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは、軽歩兵の支援を主目的にしたメカであるが、装備を換装することで戦場での装甲車両としても運用でき、特に攻城戦を主とする接近戦で戦果を挙げた。

ザ・マイティ・サーヴァントと標準装備パッケージ(以下参照)の購入難易度は47である。その通り、ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは20レベル・キャラクターによって操作されるべきである。ダンジョン・マスターズ・ガイドの20レベルNPCファイター(177ページ)は適当なパイロットとなるだろう。

標準装備パッケージ: クラスVI・センサー・システム(兜)、パイロットズ・コクピット(兜と胴)、パッセンジャーズ・コクピット(胴と背中)、ナノ・リペア・ユニット(左腕)、ツナミ480・プラズマ・キャノン(肩×2、左腕)、PS-25・タイガー・クロウズ(右腕)、マークIV・ディフェンス・フィールド(右腕)、ゼロ・ポイント・エナジー・パワー・コア(+4スロット)、ストラクチュアル・エンハンスメント×2(背中、パワー・コア)、ライフ・サポート(パワー・コア)、スペース・スキン(パワー・コア)、ヘヴィー・フォーティフィケーション(パワー・コア、ブーツ×2)

ヒット・ポイントと速度: ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーはメガタニウム装甲によって30の硬度に20の基本ヒット・ポイントと100のボーナス・ヒット・ポイントを持つ。追加の100ヒット・ポイントは2つのストラクチュアル・エンハンスメントによるのである。基本移動速度は20フィートで、走行や突撃は搭乗者が《Mecha Operation》(訳註: d20 Futureの追加特技)の特技を持っていないと行えない。

防御能力: ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーの基本ディフェンス・スコア(すなわち、アーマー・クラス)は10に-1のサイズ修正値で、これにメガタニウム装甲の+12装備ボーナスとマークIV・ディフェンス・フィールドの+4反発ボーナス、そして+1の強化ボーナスを加えた26が最終的なディフェンス・スコアになる。ナノ・リペア・ユニットは1ラウンドに5点のヒット・ポイントを治癒する。また、ライフ・サポートとスペース・スキンがあるため、メカとパイロットは水中や生存困難な大気中、完全な真空中でも24時間までは通常通り活動することができる。

耐性: ザ・マイティ・サーヴァントはd20 Future Tech(66ページ)の“mecha as vehicles”選択ルールを使用して作成される。乗り物として、[火]と[電撃]によるダメージを1/2、[冷気]によるダメージを1/4にする。[精神効果]、毒、睡眠、麻痺、朦朧状態、病気、死霊術による効果、物体に影響をおよぼすか無害であるもの以外の頑健セーヴを要求する効果は無効である。クリティカル・ヒット、非致傷ダメージ、能力値ダメージ、能力値吸収、大規模ダメージの影響を受けることは無い。コクピットにいるパイロットと同乗者は外部からの攻撃に対して100%の遮蔽を持っている。メカのセンサー・システムはパイロットに180フィートの暗視と彼もしくは彼女にほとんどの障壁を透かし見る能力を与える。

攻撃能力: 攻撃的な観点からザ・マイティ・サーヴァントを見れば、26の【筋力】を持っている。そして、鉤爪を用いてパイロットの基本攻撃ボーナス(BAB)を基準に攻撃することができる。ただし、【筋力】ボーナスとサイズ修正値はパイロットではなくメカのものを使用する。鉤爪による攻撃が成功すれば、6d8+8のダメージを与えることができる。また、ザ・マイティ・サーヴァントはひとつの射撃武器で攻撃することもできる。射撃攻撃の攻撃回数はパイロットのBABを使用する。この場合、パイロットではなくメカのサイズ修正値を使用する。

ザ・マイティ・サーヴァントの射撃武器にはふたつの攻撃方法がある。ひとつ目は1500フィートの最大射程を持ち、1体の目標を攻撃するもの。ふたつ目は60フィートの円錐形に行うもの(反応セーヴ難易度: 19、半減)。どちらも遠隔攻撃が命中した場合、12d6の[火]ダメージを与える。

魔鬼憑依: ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーは大型サイズのメカである。真の創造者が誰であるにしろ、リークオー将軍によって発見される以前、メカはグラブレズゥに憑依されている。このデーモンはザ・マイティ・サーヴァントを通して秩序にして善の英雄が混沌にして悪の大将軍になるよう誘惑することに力を使っている。憑依しているデーモン、グラブレズゥはメカを強化するために働いており、24000gp相当の魔法的強化を与えている。この強化は[酸]に対する抵抗10、呪文抵抗13、メカのディフェンス・スコア(AC)に対する+1の強化ボーナスである。パイロットが魔鬼の機嫌を損ねるならば、彼は効果のいずれか、もしくは全てを自由に解除することができる。

デーモンはディスミサルに対する脆弱性を持っており、バニッシュメントと同様の効果を与えることができる。そのため、彼は正体を現すことに慎重であるはずだ。もしデーモンが祓われるか別の方法でメカから排除されれば、ザ・マイティ・サーヴァントは“普通”のメカに戻り、デーモンの強化によって得られた効果は全て失われる。しかし、他の手段で与えられた能力は全て保持したままである。もし、グラブレズゥが憑依したままザ・マイティ・サーヴァントが破壊された場合、デーモンは非実体のまま無傷で分離する。

憑依している間、グラブレズゥはいかなる変則的能力、擬似呪文能力、超常能力も使用することはできない。もしデーモンが適当なパイロットを見つけたなら、フリー・アクションで元の姿に戻って全ての能力を使用するかもしれないが、そうした場合ザ・マイティ・サーヴァントへの強化は全て失われる。また、彼はいつでも肉体を消してザ・マイティ・サーヴァントへ戻ることができる。

パイロットを堕落させるためにデーモンがよく使う手はザ・マイティ・サーヴァントの能力を強化するためにウィッシュを使ういうものである。注意すべきは、リークオー将軍が大変長期に渡ってこのアーティファクトを所有していたということだ。彼が何度グラブレズゥからウィッシュの恩恵を享受したかは伝えられておらず、彼はより多くの回数ザ・マイティ・サーヴァントを強化したかもしれない。上で挙げたデータはあくまでも基準にすぎない。DMは自らの悪魔的な目的に適するまでザ・マイティ・サーヴァントを強化すべきである。

ザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーはグレイホークの有名なアーティファクトである。伝説では、リークオー将軍とインファーナル・マシンを操る狂気のラムの最終決戦で発生した次元の裂け目に消えたとされている。これにより、DMはどんなキャンペーン・セッティングにもグレイホークを起源に持つザ・マイティ・サーヴァントを導入する準備ができた。あとはこの強力なアーティファクトを君のPCたちに知らしめる必要がある。次のような導入はどうだろうか。

1.宝探し:ある老人がパーティに失われていたドワーフの手によるアイアン・ゴーレムの回収を依頼する。彼はありかを発見したと思っているが、そこは遠く危険な場所である。そのため、彼は自分をゴーレムがいる場所まで連れて行き、回収した後に安全な人里まで送り届けるならパーティに報酬を支払うと言っている。

2.大将軍:強力な大将軍がザ・マイティ・サーヴァント・オヴ・リークオーを発掘し、近隣諸国を征服しようとしている。密偵はパーティを探し、大将軍の企てを阻止するよう願う。

ビル・キャナバンは25年以上ゲームをしている。その間、彼はダンジョンズ・アンド・ドラゴンズやd20モダン、Star Wars d20のシナリオを書いてプレイした。ビルは現在、ニュー・ハンプシャー州で妻と2匹の猫と同居している。