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地獄紳士録

地獄の公爵たち

ロバート・J・シュワルベ

九層地獄バートルを貫く主題があるとすれば、それは絶対的な専制という原理である。そこでは力を持つ者こそが全て、あらゆる住人は地位、派閥、そして目的を持つが、役割に忠実であることは他の全てに優先する。九層地獄に存在する部局はバーテズゥの相互関係を理解するのに役立つが、それらは磐石であると同時に流動性が高く、下層の者が階級制度の中でより大きな地位へ昇格することを許していることに注意すべきだ。たゆまぬ奉仕、狡猾さ、裏切り、そして殺しはすべて、彼らの競争相手を破って彼らに対する無数の陰謀を妨害して向上するための手段でありデヴィルが彼らを支配するための法である。

『魔物の書II』には地獄での地位向上の方法や、バーテズゥの歪んだ社会を形成さするさまざまな階層に注目している。紙幅の多くをグレーター、レッサー、そしてリースト・デヴィルの違いについて割いたが、もうひとつの階級を紹介しておらず――ここで公開する。彼らは地獄の公爵、グレーター・デヴィルよりも強力だがアークデヴィルには及ばないフィーンドで、彼らの領土を失ったものや家臣としての地位にある者である。多くの場合、これら公爵は強力で名前をもつグレーター・デヴィルで最も強力なピット・フィーンドたちである。しかし、他は唯一の存在――バーテズゥは彼らの能力、力、そして情念によってピット・フィーンドを超越した力を手に入れることができる。ここで紹介するのは、そのような珍しくて強力な公爵たちである。

地獄とは何か?

この記事を読み進めると、君は恐らく『魔物の書II』で紹介されたアークデヴィルよりもここで紹介される公爵が強力であることに気づくだろう。これは意図的なものである。『魔物の書II』の大公たちはアスペクトで、アークデヴィルが持つ力のひとかけらに過ぎない。ここで紹介される公爵たちは本体そのものである。彼らはアスペクトを作成する能力を持たず、遭遇するときはぼ常に彼らの本体と出会う。

脅威度がキャラクターのためにあるものなので、高いとはいえピット・フィーンドより少々高い程度で、その他の法外な強さのモンスター――最たるものは『Epic Level Handbook』にある忌まわしきもの(abomination)――ほどではない。君はこの記事で示されるステータスを考慮する必要がある。君のキャンペーンに出現するクリーチャーの脅威度が30、40、それ以上だった場合、君はこれらのデヴィルを彼らの敵になるよう強大化しなければならない。これは単に『モンスター・マニュアル』の『第4章:モンスターの強化』にしたがって望ましい脅威度にしてステータスを修正すればよい。

他の出典

この記事はいくつか他のソースブックから引用を行なっている。参照すべき文章がある場所で、それは次のような省略形を使用する。引用されたソースブックとその省略形は以下の通り。

省略形 引用元
『秘』 『秘術大全』
『戦』 『戦士大全』
『魔I』 『魔物の書I』
『魔II』 『魔物の書II』
『PII』 『プレイヤーズ・ハンドブックII』
『MI』 『Magic Item Compendium』
『MM3』 『モンスター・マニュアルIII』
『ToM』 『Tome of Magic』

一般的な攻撃オプション

地獄の公爵たちは以下の攻撃オプションの片方か両方を持つ。

属性打撃:この能力を持つクリーチャーによる攻撃はダメージ減少を克服するさいに指定された属性として扱われる。

エピック級打撃:この能力を持つクリーチャーによる攻撃はダメージ減少を克服するさいにエピックとして扱われる。

“追放者”モロク

立派な赤橙色の肌を持つ巨人がよろよろと前に進むと、鞭が空を激しく薙いだ。獣のような角が生えた頭、燃え立つように光る釣りあがってねめつける目はまばたきひとつせず、牙を剥き出しにした口からは悪臭のするよだれをしたたらせている。

モロク 脅威度22
hp459(34HD);高速治癒10;ダメージ減少15/エピックおよび善

秩序にして悪、大型サイズの来訪者(悪、他次元界、秩序、バーテズゥ)
イニシアチブ+3;知覚 暗闇を見通す;〈聞き耳〉+46、〈視認〉+46
言語:タング;テレパシー100フィート

AC42、接触12、立ちすくみ39(-1サイズ、+3【敏】、+8鎧、+22外皮)
完全耐性:毒、[火]
頑健+30、反応+24、意志+30

移動速度:30フィート(6マス)
近接:地獄の炎の爪(×2)+41(1d8+8および1d6[火]および善に対して1d6)および噛みつき+39(2d6+4)もしくは
近接:モロクズ・スカージ+47/+42/+37/+32(2d6+8および非固定の[火])
接敵面10フィート;間合い10フィート
基本攻撃ボーナス+34;組みつき+46
攻撃オプション:《皮剥ぎ打撃》、《強打》、《薙ぎ払い》、《薙ぎ払い強化》、つかみ強化、属性打撃(悪、秩序)、《迎え討ち》
特殊なアクション:ブレス攻撃、バーテズゥ招来
擬似呪文能力(術者レベル20):
回数無制限――ウォール・オヴ・ファイア(難易度22)、ギアス/クエストクリエイト・アンデッドグレーター・テレポート(自身と50ポンドまでの物体のみ)、グレーター・ファイアーバースト(難易度23)『呪』コンフュージョン(難易度22)、サジェスチョン(難易度21)、シー・インヴィジビリティパーマネント・イメージ(難易度24)、ファイアーボール(難易度21)、フライリミテッド・ウィッシュ(他者からの願いのみ)
1回/日――シンボル・オヴ・スタニング(難易度25)、ブラスフェミィ(難易度25)、フレイム・ストライク(難易度23)

能力値:【筋】26、【敏】17、【耐】28、【知】15、【判】29、【魅】27
その他の特殊能力:次元束縛
特技:《皮剥ぎ打撃》『PII』、《頑健無比》、《擬似呪文能力高速化:グレーター・ファイアーバースト》、《強打》、《神速の反応》、《薙ぎ払い》、《薙ぎ払い強化》、《能力熟練:ブレス攻撃》、《鋼の意志》、《武器熟練:スカージ》、《迎え討ち》、《複数回攻撃》
技能:〈威圧〉+45、〈聞き耳〉+46、〈交渉〉+45、〈視認〉+46、〈精神集中〉+46、〈生存〉+46(他の次元界では+48)、〈知識:次元界〉+39、〈知識:宗教〉+39、〈知識:歴史〉+39、〈跳躍〉+45
所持品:モロクズ・スカージアミュレット・オヴ・ヘルス+6ジェム・オヴ・シーイングブレイサーズ・オヴ・アーマー+8

タング(超常):常に効果をおよぼしているタングの呪文として扱う、術者レベル20。
高速治癒(変則):銀かつ善の属性を持つ武器はモロクに通常通りダメージを与えることができる。モロクが手足や体の一部を失った場合、失われた部位は1分で再生する。モロクは切断された部位をすぐにもとの場所につけることで再び繋ぎ合わせることができる。
地獄の炎の爪(超常):モロクは彼の爪による攻撃とともに1d6の[火]ダメージと1d6の不浄ダメージを与える。この攻撃を受けたクリーチャーは難易度35の反応セーヴに失敗すると発火する。炎は消されない限り10ラウンド燃えつづける。燃えているクリーチャーは1全ラウンドアクションを使って炎を消すことができる(『DMG』303ページ、発火を参照せよ)。セーヴ難易度は【筋力】に基づく。
モロクズ・スカージ:このいかつい武器には4つのしなやかな金属索がつけられている。それらは振るわれたとき、青白い炎を噴き出す。モロクズ・スカージは武器による通常のダメージに加えて最大20の[火]ダメージを与える。モロクはこの追加ダメージをおのおのの攻撃において分割することもできる。彼は攻撃ロール前にその決定を行なわなければならない。
つかみ強化(変則):この能力を使用するために、モロクは爪による攻撃で敵に攻撃を命中させなければならない。そして彼は機会攻撃を誘発せずにフリー・アクションで組みつきを行なえる。彼が組みつき判定に勝利すれば、彼は自動的に噛みつきのダメージを与える。
ブレス攻撃(超常):30フィートの円錐形、回数無制限、影響を受けたクリーチャーは10ラウンドの間恐慌状態となる、難易度36の意志セーヴで無効化。この能力へのセーヴに成功したクリーチャーは24時間の間再び影響を受けることはない。セーヴ難易度は【耐久力】に基づく。
バーテズゥ招来(擬呪):80%の確率で1d3+1体のホーンド・デヴィルを招来できる。1回/日。術者レベル20。この能力は9レベル呪文として扱う。
次元束縛(変則):追放されたデヴィルであるモロクは、彼を強制的にアヴェルヌスから離れさせようとする効果が発生したときにはいつもランダムで100マイル瞬間移動させられる。

モロクは九層地獄バートルの第6階層から追放された公爵である。称号は剥奪され裏切りによって弱体化した彼は、昔日の彼が落とす影である。

戦略と戦術

モロクは彼が憎むデーモンから学んだ戦術を利用する。彼は敵の退路を断つためにウォール・オヴ・ファイアを使った後に弱い敵を排除するためにブラスフェミィを使う。彼の間合いに敵が入ったなら、彼は高速化したグレーター・ファイアーバーストを発動してスカージで殴りかかる。複数の敵に対して、彼はブレス攻撃を行なうことが多い。 今このときの戦闘が必須ではない場合、モロクは定命の者からの賭けを受けつけない。彼は再び己の領土と大いなる力と素晴らしい富を取り戻すことを望み、ささやかにそれを夢想している。彼は接触する者たちに混乱と誤解を与えるためにパーマネント・イメージとサジェスチョンをよく使い、彼らを自らに仕えさせるべく誘導する。

部下、敵、そして目的

劫初、アスモデウスが闇天使の首領だった時代に無限の深淵である奈落から溢れ出したデーモンの群れと戦ったとき、彼は部下の戦士を率いていたが、モロクはその中で最も強かった。一部では彼の名前をちらつかせただけで彼の恐ろしい鞭の一撃を知るタナーリは恐怖で泣き叫ぶほどだったと言われるほど、度胸があり恐れを知らぬ兵士だった。彼の永年に渡る忠誠と絶え間なく敵へ向けられた憎悪の報酬として、アスモデウスは彼にマーレボルジェを領土として与えた。ネッソスの主人は常にバーテズゥで一番の切れ者だったため、彼はモロクの副王としてバールゼブルを配置し、彼らがネッソスへの野望を募らせるよりはお互いに監視しあうことに時を割くようしむけた。

モロクは彼の地位と身分にふさわしい、恐るべきナイト・ハグのマラガールデを配偶者として迎えた。ナイト・ハグは大変狡猾な魔女で、モロクの領土にある悪臭を放つ膿汁の池に現われて空を震わす絶望の歌で彼を誘惑し、マラガルーデは愛人を喜ばせ、彼の醜い姿に異端者や背教者の燃え盛る墓から集めた油で化粧を施した。不正者の霊液を塗る間、、彼女は権力者の彼氏に囁き、彼の誇りと野心を刺激し、より大きな九層地獄全土を支配する野望へと彼を駆り立てた。「モロク」彼らをいい気分にさせる臭い息を吐きかけ、彼女は囁く「この地獄は力と意志で導いてくれるひとを待ってるわ」。

モロクはマラガールデが実は彼の他に第5階層の主ゲリュオンと二股をかけていたほど、不実で邪悪だということを知らなかった。ゲリュオンはナイト・ハグにモロクとバールゼブルの手を組ませ、野心的な領主によるアスモデウスの反乱を煽ろうとした。彼女はゲリュオンの高い地位と、自らの地位を高める打算に従ってそれを行なった。彼女はアスモデウスを除いた後にバールゼブルも排除するという大胆な計画を執拗にささやきモロクをして反乱軍に加わらせたのである。アスモデウスは叛乱を鎮圧して首謀者たちを倒し、大いなる力が得られるという打算に誘われた愚かなモロクは敗北し、挫折、あざけり、そして苦痛を味わったと『炎の書』に記録されている。

恐ろしい戦争の仕上げとして、ゲリュオンは再びマラガールデを迎え、彼女にモロクが反逆者でありつづけるようそそのかすよう願い、そしてマラガールデは実行した。モロクは愚かにもアスモデウスに拘束され、彼は頭を垂れこすりつけることを拒絶して第9階層の主から怒りを買った。モロクは野心ゆえに降格し、マラガールデは彼の地位へと昇格した。新たにハグ女伯爵となったナイト・ハグが最初に行なった仕事は、彼女の愛人を物質界へと追放することで、彼は火の玉となって彼が軽蔑していた世界へと落ちていった。

何世紀もかけ、追放されたアークデヴィルは定命の信者を集めると共に九層地獄で同情的な兵士を糾合して軍隊を成長さた。彼の大軍勢は止められず、ハグ女伯爵を追い落として彼の失地を回復させる勢いだった。だが彼は九層地獄に再び入るために必要なザ・ストーン・オヴ・コルビネットを盗まれ、主を欠いた彼の軍隊はマラガールデの圧倒的な力の前に壊滅した。

モロクの物語はこの敗北で終わったわけではない。邪悪な行為と呪わしい取引を通し、彼は九層地獄へと帰還を果たし、成り上がりのベルが率いる軍で失脚した下級悪魔を集めて配下に置いた。彼は復讐を果たして帰還を果たすその日を夢想し、陰謀を練りつつ雌伏している。

モロクはマラガールデの失脚と末路を喜んだが、身内びいきの第9階層の主が行なったグラシアの昇進には気分を害した。現在のモロクは他の追放された危険分子を率い、新たな軍を集めてもう一度彼が支配する地獄の新時代をもたらそうとしている。

モロクは物質界に定命の配下をほとんど持っていない。彼のカルトは主の長い沈黙によって不安をつのらせ、ほとんどが小規模で閉鎖的である。モロクのカルト員は悪、秩序、そして炎の領域を使えるが、3レベル以上の呪文を発動することができない。モロクが好む武器はスカージである。

ティティウィルス

この男からは有無を言わさぬ何かを感じる。君は彼の脚が黒い毛皮をした山羊のもので、背中から小さな黒い翼が生えて一対の黒い角が禿頭の正面から突き出ているにもかかわらず、彼に対して親近感を感じる。

ティティウィルス 脅威度22
hp346(33HD);高速治癒10;ダメージ減少15/エピックおよび善

秩序にして悪、中型サイズの来訪者(悪、他次元界、秩序、バーテズゥ)
イニシアチブ+8;知覚 暗闇を見通す;〈聞き耳〉+43、〈視認〉+43
言語:タングヴェントロリキズム;テレパシー100フィート

AC40、接触18、立ちすくみ36;《回避》、《強行突破》、《ディスの印》(+4【敏】、+5反発、+21外皮)
完全耐性:毒、[火]
抵抗:[酸]10、[冷気]10;呪文抵抗33
頑健+26、反応+22、意志+25

移動速度:40フィート(8マス)、飛行80フィート(良好);《かすめ飛び攻撃》
近接:+5銀製バスタード・ソード・オヴ・ウーンディング+47/+42/+37/+32(1d10+11/19-20および1【耐】)もしくは
近接:爪(×)+42(1d4+4および恐怖)
基本攻撃ボーナス+33;組みつき+37
攻撃オプション:エピック級打撃、恐るべき打撃、急所攻撃+5d6、《攻防一体》、《迎え討ち》、属性打撃(悪、秩序)、《煩わしき挟撃者》
特殊なアクション:堕落の囁き、バーテズゥ招来、変身
擬似呪文能力(術者レベル20):
回数無制限――クラッシング・ディスパイア(難易度25)、クリエイト・アンデッドグレーター・インヴィジビリティグレーター・テレポート(自身と50ポンドまでの物体のみ)、グレーター・ビストゥ・カース(難易度29)『呪』サジェスチョン(難易度24)、センディングチャーム・モンスター(難易度25)、ノンディテクションパーシステント・イメージ(難易度26)、ヒュプノシズム(難易度22)、マジック・サークル・アゲンスト・グッドマイザーズ・エンヴィ(難易度24)『呪』ミスディレクション(難易度23)、モディファイ・メモリー(難易度25)
1回/日――シンボル・オヴ・スリープ(難易度26)、フィーブルマインド(難易度26)

能力値:【筋】28、【敏】19、【耐】27、【知】26、【判】24、【魅】33
特技:《イニシアチブ強化》、《回避》、《かすめ飛び攻撃》、《擬似呪文能力高速化:グレーター・テレポート》、《九層地獄の烙印:ディスパテル》『魔II』、《強行突破》、《強打》、《攻防一体》、《ディスの印》『魔II』、《能力熟練:堕落の囁き》、《迎え討ち》、《煩わしき挟撃者》『PII』
技能:〈威圧〉+49、〈解読〉+44、〈鑑定〉+44、〈聞き耳〉+43、〈交渉〉+51、〈視認〉+43、〈呪文学〉+46、〈情報収集〉+47、〈真意看破〉+43、〈精神集中〉+44、〈生存〉+46(他の次元界では+45)、〈知識:次元界〉+44、〈知識:神秘学〉+44、〈知識:地域〉+44、〈知識:歴史〉+44、〈はったり〉+47、〈変装〉+11(演技をするさいは+13)、
所持品:+5銀製バスタード・ソード・オヴ・ウーンディング、クリスタル・ボール・ウィズ・テレパシー

タング(超常):常に効果をおよぼしているタングの呪文として扱う、術者レベル20。
ヴェントロリキズム(超常):常に効果をおよぼしているヴェントロリキズムの呪文として扱う、術者レベル20。
高速治癒(変則):エピックかつ善の属性を持つ武器や[善]副種別を持つ呪文や擬似呪文効果はティティウィルスに通常通りダメージを与えることができる。ティティウィルスが手足や体の一部を失った場合、失われた部位は1分で再生する。ティティウィルスは切断された部位をすぐにもとの場所につけることで再び繋ぎ合わせることができる。
恐るべき打撃(超常):ティティウィルスの攻撃が命中したクリーチャーは難易度37の意志セーヴに成功しなければフィアーの呪文(術者レベル20)と同じ効果を受ける。この能力へのセーヴに成功したクリーチャーは24時間の間再び影響を受けることはない。セーヴ難易度は【魅力】に基づく。
変身(超常):ティティウィルスは標準アクションで大型サイズ以下の人型生物や人怪の姿を取ることができる。新しい姿を選ぶまでティティウィルスはその姿のままである。殺されればティティウィルスは彼本来の姿に戻る。トゥルー・シーイングの呪文は彼本来の姿を見ることができる。
堕落の囁き(超常):全ラウンドアクションとして、ティティウィルスは60フィート以内の生きているクリーチャー1体のみが聞こえる冒涜的な言葉を立て板から水が落ちるように囁きかける。目標が難易度39の意志セーヴに失敗すればそれの属性は1d8+1時間の間一時的に秩序として悪になる。この間、影響下のクリーチャーは新しい属性に沿った行動を取る。通常、この効果は自発性を奪わないが、クリーチャーが行動指針に違反する危険性にはさらされる。そうなった場合、彼らは通常と同じように罰を受けるが、アトーンメントの呪文をかけられることで彼らは贖罪することができる。
バーテズゥ招来(擬呪):80%の確率で1d4+4体のエリュニスを招来できる。1回/日。術者レベル20。この能力は9レベル呪文として扱う。

ディスパテルの副王兼大使、ティティウィルスは地獄の強力な公爵である。

戦略と戦術

ティティウィルスは彼が容易に勝てない戦闘には絶対関わらないよう注意している。無用であったり破滅的な対立を避けるため、彼はミスディレクションと高速化したグレーター・テレポートに頼る。

より弱い敵が現われたとき、彼は偏執狂的な主と同じくらい用心深いものの、ティティウィルスは自ら戦闘へ出向くことが多い。ディスの副王はまずグレーター・インヴィジビリティを発動し、パーシステント・イメージの幻影で鉄の壁を作る。こうして充分に備えた上で、彼は恐怖の乙女――エリュニスの群れ――を呼び出して彼が隠れている間にサジェスチョンチャーム・モンスター、そしてクラッシング・ディスパイアを用いて敵の態度を軟化させる。ティティウィルスが近接戦闘を行なうのは彼の敵が死にかけているときだけである。

部下、敵、そして目的

どういうわけか、ディスパテルはティティウィルスに対して全幅の信頼を寄せている。第2階層の主は彼の副王を己の権益が関わる全ての問題について代理人としているため、しばしばティティウィルスこそがディスパテルその人という意見や彼の紳士的な微笑という仮面の下で副王がひそかに彼の主を滅ぼしているのではないかと囁かれている。

ディスパテルの宮廷におけるティティウィルスの役割は、彼の絶大な力と、ディスの軍隊に所属するピット・フィーンドを言葉ひとつで追い出すほどの威信にある。ほとんどの者は副王を恐れ、彼を軽蔑し、彼とディスパテルの近しさを憎む。たとえ彼らのような冷酷な競争相手がティティウィルスを失脚させる機会のひとつやふたつに恵まれても、彼らはその後に訪れる復讐と失脚を恐れる。

“ティティウィルスが地獄で傑出しているゆえんは彼が仕える主人にある。ディスパテルは誰もが知るほど偏執狂的な主で、陰険な罠と恐ろしい下僕に守られた果てしない鋼の回廊の中で引きこもっている。彼は本当にめったなことでは塔を離れず、そしてそうするときは彼の街、ディスが急に襲われたときくらいである。その代わり、彼は権益を守るためにティティウィルスを重用する。これは不思議とこの野心的なフィーンドが義務と感じ、“復讐者”アリオクとさらにディスパテルの配偶者リリスより価値のある公爵として彼は義務を果たしている。”
――『炎の書』

ディスパテルの宮廷で唯一ティティウィルスを恐れないのは“鋼の復讐者”アリオクである。この力強い公爵は第2階層の主に執行者として仕えており、黒い翼で街を遠くから見渡して彼が主に対する裏切りの疑いをかけた者に襲い掛かる。ティティウィルスはアリオクを同僚としてけして間違いがないように扱うが、彼らふたりの間に失われる愛は無く、どちらも相手を滅ぼせる機会があるならば彼を滅ぼすだろう。

ティティウィルスは定命の下僕をほとんど持っていない。このディスの副王を崇拝するわずかな者たちは書記官、神学者、そして破門された司祭であり、彼らは全て彼らが属する(していた)善の教会に伝わる聖なる書物を冒涜するために疲れを知らずに働く。余分な行で人を間違った道へと誘って彼ら永遠に魂の探求を行なう彼らはバーテズゥとより多く取引して力を与える。

バエル

大柄な人の形をしたものが君に微笑みかけ、鋭い歯でいっぱいの広い口を露わにする。金色と調和する青白い目の上にある額からは小さなふたつの角が金の皮膚を突き破って生えている。大きくとがった耳が真紅のたてがみから突き出ている。

バエル 脅威度23
hp367(35HD);高速治癒10;ダメージ減少15/エピックおよび善

秩序にして悪、大型サイズの来訪者(悪、他次元界、秩序、バーテズゥ)
イニシアチブ+3;知覚 暗闇を見通す、トゥルー・シーイング;〈聞き耳〉+45、〈視認〉+45
オーラ:恐怖(20フィート、難易度36)、《九層地獄の烙印:マモン》 言語:タング;テレパシー100フィート

AC40、接触14、立ちすくみ39(-1サイズ、+1【敏】、+11鎧、+4反発、+15外皮);クリティカル・ヒットによる追加ダメージ無効化確率75%
完全耐性:毒、[火]
抵抗:[酸]10、[冷気]10;呪文抵抗33
頑健+34、反応+33、意志+35

移動速度:フル・プレート着用で30フィート(6マス)、基本移動速度40フィート
近接:+4超大型フレイミング・バースト・ヴィシャス・モーニングスター+44/+39/+34/+29(3d6+18/19〜20および2d6および1d6[火])および噛みつき+37(1d8+4および“毒”)
接敵面10フィート;間合い10フィート
基本攻撃ボーナス+35;組みつき+47
攻撃オプション:エピック級打撃、《強打》、《強力突撃》、属性打撃(悪、秩序)、《突き飛ばし強化》、“毒”、《ふっとばし攻撃》、《ミナウロスの印》
特殊なアクション:堕落感知、バーテズゥ招来、変身
戦闘で使用する装備:リング・オヴ・テレキネシスロッド・オヴ・ネゲイション
擬似呪文能力(術者レベル20):
回数無制限――アニメイト・デッドインヴィジビリティグレーター・ディスペル・マジックグレーター・テレポート(自身と50ポンドまでの物体のみ)、サジェスチョン(難易度22)、パイロテクニクス(難易度21、『PHB』267ページ)、ヘルファイア・ストームマス・インフリクト・シリアス・ウーンズ(難易度26)
2回/日――エア・ウォークドミネイト・モンスター(難易度28)、リミテッド・ウィッシュ(他者からの願いのみ)
1回/日――シンボル・オヴ・スタニング(難易度26)

能力値:【筋】26、【敏】17、【耐】23、【知】16、【判】25、【魅】28
特技:《大業物》『戦』、《擬似呪文能力高速化:サジェスチョン》、《九層地獄の烙印:マモン》『魔II』、《強打》、《強力突撃》『MM3』、《クリティカル強化:モーニングスター》、《神速の反応》、《突き飛ばし強化》、《武器開眼:モーニングスター》、《武器熟練:モーニングスター》、《ふっとばし攻撃》、《ミナウロスの印》『魔II』
技能:〈威圧〉+49、〈聞き耳〉+45、〈交渉〉+51、〈視認〉+45、〈真意看破〉+45、〈精神集中〉+44、〈生存〉+45(他の次元界では+47)、〈知識:次元界〉+41、〈知識:宗教〉+41、〈知識:神秘学〉+41、〈はったり〉+47、〈変装〉+9(演技をするさいは+11)
所持品:+4超大型ファイアリー・バースト・ヴィシャス・モーニングスター+3フル・プレート・オヴ・モデレット・フォーティフィケイション

トゥルー・シーイング(変則):常に効果をおよぼしているトゥルー・シーイングの呪文として扱う、術者レベル20。
恐怖のオーラ(超常):バエルのターン終了時に、彼の20フィート以内にいるクリーチャーは難易度36の意志セーヴに失敗すると10ラウンドの間恐慌状態となる。セーヴに成功したクリーチャーは24時間の間バエルのオーラから再び影響を受けることはない。バーテズゥはオーラの影響を受けない。セーヴ難易度は【魅力】に基づく。
高速治癒(変則):エピックかつ善の属性を持つ武器や[善]副種別を持つ呪文や擬似呪文効果はバエルに通常通りダメージを与えることができる。バエルが手足や体の一部を失った場合、失われた部位は1分で再生する。バエルは切断された部位をすぐにもとの場所につけることで再び繋ぎ合わせることができる。
暗黒の祝福(超常):バエルは彼の【魅力】ボーナスを全てのセーヴに不浄ボーナスとして加算する。
毒(変則):致傷型・頑健・難易度33、20ダメージ/2d6【耐】。セーヴ難易度は【耐久力】に基づく。
変身(超常):バエルは標準アクションで大型サイズ以下の人型生物や人怪の姿を取ることができる。新しい姿を選ぶまでバエルはその姿のままである。殺されればバエルは彼本来の姿に戻る。トゥルー・シーイングの呪文は彼本来の姿を見ることができる。
堕落感知(超常):バエルは彼が見ることのできるクリーチャーの堕落(corruption)および不浄(taint)値を自動的に知ることができる。さらに、標準アクションを使うことでバエルはアンディテクタブル・アラインメントなどの呪文で隠されていない限り自動的にクリーチャーの属性を知ることができる。
バーテズゥ招来(擬呪):85%の確率で1d4+2体のバーブド・デヴィルを招来できる。1回/日。術者レベル20。この能力は9レベル呪文として扱う。

バエルはマモンの家臣にしてバーブド・デヴィル66個中隊を率いる司令官である。

戦略と戦術

ほとんどの地獄の公爵たちと同様、バエルは彼が確実に倒せない敵と戦うことを嫌い、彼が率いるバーブド・デヴィルの軍団に汚れ仕事に使うことを好む。戦いになれば、彼は高速化したサジェスチョンで他のキャラクターを射程内に招き寄せてマス・インフリクト・シリアス・ウーンズを使う。この呪文によるダメージを耐えたキャラクターは、次のラウンドで、遭遇の間バエルの下僕とするためのドミネート・モンスターの対象になる。バエルは彼自らがモーニングスターで戦わなければならないときそれを災難だと考えるが、彼が《強力突撃》を使って間合いにいる敵をことごとく血だまりにすることをためらわせるものではない。

部下、敵、そして目的

バエルは九層地獄バートルで最も偉大な将軍のひとりで、実戦知識と力強い個性は彼が指揮するフィーンドの大軍勢から敬意と名声をあつめている。バエルはアヴェルヌスの最前線で驚嘆に値する奉仕をし、第1階層の主や他の気まぐれな暗黒八魔将からも一目置かれているが、バエルは今のところマモンの家臣であるという地位に満足しているようだ。バエルに野心があるとすれば、彼が大公に出世するため――ハグ女伯爵を除くために彼が正統な候補としてグラシアを推挙したと囁く者もいる――であるということにほとんど疑いはない。バエルが他の大公と肩を並べることをためらう唯一の理由は彼が地獄の政界で熟練した指し手ではないということで、上司からたやすく裏をかかれるより、現在のような俗物の影に控えることを彼は選んだ。

バエルが地獄の階級制度で地位を上昇させるための味方全部より、この黄金将軍には自分たちのために彼を利用したり信用を失墜させようとする敵のほうが多い。最も大きな陰謀の温床はマモンの宮廷そのものに他ならない。大公は偏執的で彼の宮廷で陰謀に不慣れな者が背信を行なえばそれは命取りになる。こうして、マモンの側近は3つの派閥に分裂した。

ひとつはマモンの執事フォーカルールで、彼は恋人と大公の新しい配偶者グウェラと共にバエルに彼の主人を倒さざるをえない状況に追い込もうと暗躍している。フォーカルールは影の実力者となるつもりで、バエルは彼の目的を遂行するための操り人形と考えている。

執事一派と敵対するのはカールクリノラースとメルコンで、この一対の毒蛇はマモンに仕える下士官である。カールクリノラースはバーブド・デヴィル36個中隊を率い、メルコンはグラシアが彼女自身の計画を進めるためマモンの許を去ったときに彼女に続くのをよしとしなかった堕天使たち、エリュニス18個航空団を率いている。これらの競争相手はバエルを酷く嫌っていて彼を殺害し軍団を乗っ取ろうとしている。その後、彼らは叛乱を起こしてマモンを倒しこの階層を自分たちのものにしようと考えている。ほとんどの者は知らないが、彼らが仕える本当の主は昔の恋人を滅ぼして彼の階層を我が物にしようと考えるグラシアである。

物質界のディアボリストはしばしばバエルに彼にふさわしいものより大きな位階を与えており、彼を地獄の王や地獄の統領とまで呼んでいた。秘術呪文の実践者はどんな地獄の穢れも通常の呪文にはないと頭から否定するが、神秘主義者たちはバエルが定命の者にインヴィジビリティの呪文を授けると主張している。バエルは芸術作品として見受けらるが、蛙、猫、人3者が融合した奇怪なもので、本当の彼には似つかない鈍重そうな姿である。

バランとバシム

バランとバシムはかつて陽気な享楽主義の君主、ベリアルの宮廷で盟友だった。今や彼らは競争相手にして敵である。

バラン

巨人の男が灰色の蹄を響かせ突撃してくる。黄色い肌に怒りを浮かべた黒い眉とふさのような黒髭、彼の顔は愚かしい歓喜に歪んでいる。彼の目では小さな爆発が起こって光学作用のある炎を吐き出し、彼の下卑た笑いは燃え盛る。彼の脚と枝分かれした尻尾は輝けるほどの真紅で彼が殺した人々の顔から剥いだ生皮で作った厚手の革帯以外何も着ていない。

バラン 脅威度19
hp312(25HD);高速治癒10;ダメージ減少15/混沌および善

秩序にして悪、大型サイズの来訪者(悪、他次元界、秩序、バーテズゥ)
イニシアチブ+3;知覚 暗闇を見通す、;〈聞き耳〉+35、〈視認〉+35
言語:火界語、共通語、地獄語、天上語、奈落語、竜語;テレパシー100フィート

AC40、接触12、立ちすくみ37;《二刀の守り強化》(-1サイズ、+3【敏】、+4鎧、+24外皮)
完全耐性:毒、[火]
抵抗:[酸]10、[冷気]10;呪文抵抗29
頑健+28、反応+22、意志+26

移動速度:30フィート(6マス)
近接:+5バトルアックス+42/+37/+32/+27(2d6+18/19〜20/×3)および棘(×2)+32(1d8+6および“毒”)もしくは
近接:+5バトルアックス+38/+33/+28/+23(2d6+18/19〜20/×3)および+4バトルアックス+37/+32(2d6+10/19〜20/×3)棘(×2)+32(1d8+6および“毒”)および棘(×2)+32(1d8+6および“毒”)
接敵面10フィート;間合い10フィート
基本攻撃ボーナス+25;組みつき+42
攻撃オプション:《クリティカル・ロール強化:バトルアックス》、属性打撃(悪、秩序)、“毒”、《プレゲトスの印》
特殊なアクション:雄叫び、《九層地獄の烙印:ベリアルおよびフィアーナ》(近接接触+38、難易度32)、バーテズゥ招来
戦闘で使用する装備:ホーン・オヴ・ブラスティング
擬似呪文能力(術者レベル20):
回数無制限――ウォール・オヴ・ファイア(難易度24)、クリエイト・アンデッドグレーター・インヴィジビリティグレーター・ディスペル・マジックグレーター・テレポート(自身と50ポンドまでの物体のみ)、シー・インヴィジビリティテレキネシスリミテッド・ウィッシュ(他者からの願いのみ)
1回/日――トランスミュート・ロック・トゥ・ラヴァ

能力値:【筋】36、【敏】17、【耐】28、【知】19、【判】24、【魅】30
特技:《九層地獄の烙印:ベリアルおよびフィアーナ》『魔II』、《クリティカル強化:バトルアックス》、《クリティカル・ロール強化:バトルアックス》『戦』、《二刀の守り》、《二刀の守り強化》『戦』、《二刀流》、《二刀流強化》、《能力熟練:“毒”》、《プレゲトスの印》『魔II』
技能:〈威圧〉+40、〈聞き耳〉+35、〈芸能:喜劇〉+38、〈交渉〉+14、〈視認〉+35、〈真意看破〉+35、〈精神集中〉+37、〈生存〉+35(他の次元界では+37)、〈知識:次元界〉+33、〈知識:宗教〉+33、〈知識:歴史〉+33、〈跳躍〉+41、〈はったり〉+38、〈変装〉+10(演技をするさいは+12)
所持品:戦闘で使用する装備に加えて+5バトルアックス+4バトルアックスブレイサーズ・オヴ・アーマー+4ベルト・オヴ・ジャイアンツ・ストレングス+6

高速治癒(変則):混沌かつ善の属性を持つ武器か[混沌]か[善]の副種別がついた呪文か擬似呪文能力ははバランに通常通りダメージを与えることができる。バランが手足や体の一部を失った場合、失われた部位は1分で再生する。バランは切断された部位をすぐにもとの場所につけることで再び繋ぎ合わせることができる。
毒(変則):致傷型・頑健・難易度33、2d6【敏】/1d12【敏】および10ダメージ。セーヴ難易度は【耐久力】に基づく。
雄叫び(超常):5ラウンドごとに、バランは全ラウンドアクションで凄まじい雄叫びを轟かせることができる。120フィート以内の生きているクリーチャーすべては自動的に10ラウンド間怯え状態になり難易度32の意志セーヴに失敗すれば10ラウンド間恐慌状態となる。セーヴ難易度は【魅力】に基づく。
バーテズゥ招来(擬呪):85%の確率で1d8+8体のビアデッド・デヴィルを招来できる。1回/日。術者レベル20。この能力は9レベル呪文として扱う。
セーヴィング・スロー:バランはセーヴィング・スローに+5の種族ボーナスを持つ(計算済み)。

バランはプレゲトスの公爵でベリアルの忠実な部下である。

バシム

黒い鎧を着た人影は大きな角のついた兜の下から君を見て威嚇する。それは重そうな黒いとげつきの鎚を闇に打ち下ろす。その黒く長い外套は肩にまとわりついている。

バシム 脅威度19
hp312(25HD);高速治癒10;ダメージ減少15/混沌および善

秩序にして悪、中型サイズの来訪者(悪、他次元界、秩序、バーテズゥ)
イニシアチブ+7;知覚 暗闇を見通す;〈聞き耳〉+34、〈視認〉+34
言語:火界語、共通語、地獄語、天上語、奈落語、竜語;テレパシー100フィート

AC40、接触11、立ちすくみ39;《二刀の守り強化》(+1【敏】、+13鎧、+16外皮)
完全耐性:クリティカル・ヒット、毒、[火]
抵抗:[酸]10、[冷気]10;呪文抵抗29
頑健+27、反応+22、意志+25

移動速度:フル・プレート着用で30フィート(6マス)、基本移動速度40フィート
近接:ブレイクネス+35/+30/+25/+20(1d8+10)もしくは
近接:ブレイクネス+33/+28/+23/+18(1d8+10)およびインサイザー+33/+28/+23(1d6+6/17〜20)
基本攻撃ボーナス+25;組みつき+32
攻撃オプション:《攻防一体》、《プレゲトスの印》、《迎え討ち》、属性打撃(悪、秩序)
特殊なアクション:畏怖すべき存在、《九層地獄の烙印:ベリアルおよびフィアーナ》(近接接触+32、難易度28)、バーテズゥ招来
戦闘で使用する装備:ホーン・オヴ・ブラスティング
擬似呪文能力(術者レベル19):
常に発動――ディテクト・マジックリード・マジック
回数無制限――ヴェイル・オヴ・シャドウウォール・オヴ・ファイアグレーター・テレポート(自身と50ポンドまでの物体のみ)、コンフュージョン(難易度20)、シー・インヴィジビリティタングディーパー・ダークネスパイロテクニクス(難易度18)、ブリンクリミテッド・ウィッシュ(他者からの願いのみ)、レイスストライク『呪』
1回/日――シンボル・オヴ・スリープ(難易度21)、フィーブルマインド(難易度21)

能力値:【筋】25、【敏】17、【耐】27、【知】20、【判】23、【魅】22
特技:《イニシアチブ強化》、《九層地獄の烙印:ベリアルおよびフィアーナ》『魔II』、《攻防一体》、《上級二刀流》、《二刀の守り》、《二刀流》、《二刀流強化》、《プレゲトスの印》『魔II』、《迎え討ち》
技能:〈威圧〉+36、〈鑑定〉+33、〈聞き耳〉+34、〈交渉〉+10、〈視認〉+34、〈真意看破〉+34、〈精神集中〉+36、〈生存〉+6(他の次元界では+8、足跡を追うなら+8、地下では+8)、〈呪文学〉+35、〈捜索〉+33(隠し扉には+35)〈知識:建築術〉+33、〈知識:次元界〉+33、〈知識:神秘学〉+33、〈知識:ダンジョン探検〉+33、〈はったり〉+34、〈変装〉+6(演技をするさいは+8)
所持品:インサイザークローク・オヴ・レジスタンス+5+5フル・プレート・オヴ・ヘヴィ・フォーティフィケーションブレイクネス

高速治癒(変則):混沌かつ善の属性を持つ武器か[混沌]か[善]の副種別がついた呪文か擬似呪文能力はバシムに通常通りダメージを与えることができる。バシムが手足や体の一部を失った場合、失われた部位は1分で再生する。バシムは切断された部位をすぐにもとの場所につけることで再び繋ぎ合わせることができる。
ブレイクネス:バシムが利き手に持つ得物は+3グッド・アウトサイダー・ベイン・ヘヴィメイスである。バシムは即効アクションで、任意の[光]副種別を持つ4レベル以下の呪文か擬似呪文の効果を自動的に自動的に解呪することができる。彼が武器を装備している限り、全てのダンシング・ライツフェアリー・ファイアの呪文は自動的に解呪される。善の来訪者に対し、かれの攻撃とダメージ修正は1づつ増加し、クリーチャーに攻撃が命中するとブレイクネスはさらに2d6の追加ダメージを与える。
インサイザー:バシムが逆手に持つ武器は+3キーン・ショートソードである。命中した場合、武器は憎悪の毒を注ぎ込む(頑健・難易度30、1d10【耐】/20ダメージ)。
畏怖すべき存在(超常):バシムは60フィート以内のクリーチャーを指差すことで恐怖を呼び起こさせることができる。これはフリー・アクションだが、彼は片手を空けておらねばならず1ラウンドに1回までしか使用できない。対象となったクリーチャーが難易度28の意志セーヴに失敗すると、対象はバシムの60フィート以内にいる限り怯え状態になる。畏怖すべき存在のセーヴに成功したクリーチャーは24時間の間バシムの畏怖すべき存在から再び影響を受けることはない。セーヴ難易度は【魅力】に基づく。
バーテズゥ招来(擬呪):85%の確率で1d4+2体のバーブド・デヴィルを招来できる。1回/日。術者レベル20。この能力は9レベル呪文として扱う。

バシムはフィアーナが今の地位を手に入れたときベリアルへの忠誠を反故にし、娘への忠誠を誓った。

戦略と戦術

バランは容赦ない武人で、彼はデヴィルのそれよりデーモンに似た戦術を使う。実際、乱戦に対の斧を携え自ら飛び込み、行く手をさえぎる者を全てを粉砕する彼の攻撃には軽率なものも多く、彼を無鉄砲と評する者もいる。さらに少数の者はこれを混沌の傾向であると考えているが、バランは彼のやり方が絶対の秩序――死――を確実にもたらすものであると反論する。

バランはまず雄叫びをあげ、次のラウンドで彼は最も大きな敵に向かって突撃する。彼はまずデーモンを殺すことを好み、次に女性、そしてその他と優先順位が続く。彼はどのラウンドでも、できるだけ全力攻撃で鋼の旋風をきらめかせることを好む。

バラン最大の好敵手、バシムはより狡猾に戦う。かれはより用心深く、より“悪魔的”な手段を取る。バシムは彼の乗騎、滅びの風(ハーフ・フィーンド・コシュマール・ナイトメア)なしではめったに現われず彼は擬似呪文能力を使用したり敵を指差して恐怖を呼び起こすとき彼は乗騎に戦闘を任せている。

最終的にバシムが敵に近づくとき、彼は既に使っていないならばブリンクシンボル・オヴ・スリープを発動させる。近接戦闘で、彼は敵への攻撃が命中しないと確信すると命中するまで徐々に値を減らして攻撃するが、それまでは《攻防一体》に5点を費やして攻撃する。

部下、敵、そして目的

バランとバシムはかつて陽気な快楽主義の君主、ベリアルの宮廷で盟友同士だった。応報の乱の間、彼らはよく主人に仕え、ベリアルの領土を広げるために彼と敵対する勢力に軍を率いて出兵していた。しかし、『炎の書』の記録によれば彼らは敗北し、プレゲトスの広野に追い返され、彼らの主に訪れる裁きを恐れ震えていた。彼らは九層地獄の容赦ない裁きを知っており、さらにアスモデウスがベリアルの配偶者ナオミを滅ぼした様子を見て恐れた。恐らくそれは幸運か、はたまたネッソスの主には策があったのか、バランとバシムは放免された。ベリアルは表舞台を去り、保身と彼が戦争で九層地獄を荒らしたことから注意をそらすために地位を娘のフィアーナに譲った。ベリアルの賭けは功を奏してアスモデウスの恐ろしい視線は他に向けられたが、ベリアルの弱気は大公家をふたつに割った。バランは彼の主ベリアルの許に残ったが、陰ながら長い間フィアーナに懸想していたバシムは、フィアーナへの忠誠を誓った。

九層地獄においてバランとバシムのいずれも彼らの地位と名声で失ったものは少なかった。しかし、最終的に勢力拡大に失敗したベリアルに味方した者たちは彼の敵を受け継ぎ、舞台を降りたプレゲトスの旧主がふたたび返り咲くためにはフィーンドが脱落しすぎているように見える。

他のどんなバーテズゥより、彼らの敵はお互いである。応報の乱後の政変で、ベリアルは彼の娘に地位を譲るという離れ業に出て、公爵たちに彼らがどちらに仕えるか選択することを強制した。バランは、一対の暴風のような彼の言語に絶する欲望を満たすために長らく援助してきたアークデヴィルについた。しかし、バシムはフィアーナについた。バシムがこうした理由はふたつ。長い間彼は彼女に懸想していたが、さらに重要なこととして、彼は彼女をものにすることで自身を出世させて自らがプレゲトスを支配することができるとさえも考えていたのである。

最初、両者の間で緊張が花を咲かせるまで彼らは最低限の礼儀を守り、周期的にドガイを送りあうだけだった。だが、フィアーナが増長して父をさらなる影へ追いやろうとしたとき、状況は悪い方へと向かった。フィアーナは強力に成長し、バシムは旧友と道を違え、そして両者は今にも激しく衝突しそうである。

どちらの公爵も定命の信者を持たない。

著者について

ロバート・J・シュワルブはウィザーズ・オヴ・ザ・コーストの契約デザイナーで『Tome of Magic』『プレイヤーズ・ハンドブックII』『魔物の書II』『無頼大全』『Drow of the Underdark』『Monster Manual V』『Exemplars of Evil』、そして『Elder Evils』など多くのソースブックに協力している。近頃のロバートは、驚嘆に値する忍耐を持つ妻のステーシーと彼自慢のフィーンディッシュ・ワーキャットにキーボードから引き剥がされるとき以外テネシーにある彼の仕事場からめったに出ていない。

正門 > 戯の間 > D&D > 地獄紳士録 地獄の公爵たち ]