プレイを補助するためアクトトレーラーとハンドアウトのみのファイルを用意した。活用していただけたら幸いである。
西方歴1061年、ケルファーレン公ガイリングが死去する直前のことである。
死の恐怖と長年にわたって戦ってきたケルファーレン公ガイリングはいつしか闇に落ち、異端の学者たちを居城のヴァッサーシュタイン城へ招聘して非道の実験を繰り返していた。彼が最後に辿り着いた望み、それは使徒フルキフェルの相を受け継ぐ森人たちを焼き、その炭や灰を以って精錬した秘薬“生命の精髄”だった。
紅公の命令を請け、かつてメオティアの森を焼いた異端の錬金術師、ヴィルムは主と自らの欲望を満たすために森人が住むラクリマの森を目指す。しかし同じ頃、刻まれしものたちもまた、それぞれの因縁に引き寄せられて森を目指していた。
PCが森を焼こうとするヴィルムを倒せばシナリオは終了となる。
時は西方歴1061年。ケルファーレン公国の辺境、ラクリマの森にひっそりと暮らす森人たちがいた。かつて、戦で焼き払われたメオティアの森から逃れてきた部族である。
一方、領主の紅公ガイリングは異端の学者たちをヴァッサーシュタイン城に招聘し、古の秘儀に耽溺していた。彼らが追い求むるは使徒フルキフェルが力の結晶、生命の精髄。
嗚呼、悲劇は繰り返されてしまうのか。
人の欲望が大地を燃やす時、嵐は吹きすさぶ。
ブレイド・オブ・アルカナ
『少年は荒野をめざす』
あなたは深い森の小さな村で森人の母、レナーテの愛を一身に受けて育った。この季節には珍しい嵐の晩、平和な家庭に一人の騎士が迷い込んでくる。母は騎士の存在を快く思っていないようだが。
あなたは長い旅の末に親友、アルトゥルの魂を解放させるため嵐王に決闘を挑み、勝利して友人を解放した。その事を細君に報告する旅の途中、嵐と行き逢ってしまう。雨宿りするため民家の軒を叩くと、出てきたのは見知った顔だった。
あなたはかつて、燃え盛る森でアルトゥルという騎士から窮地を救われた。後、風の便りで彼は死に、家族は辺境へ移り住んだという話を聞いた。一言礼を言うための旅路で、あの時と同じように森に火を放つ輩を見つけた。
あなたは紅公の家臣だったが、彼が居城に異端の学者たちを招いていることに異議を申し立てたせいで追放されてしまった。城を辞して街道を下っていると、森人の居留地に向けて走る紅公の軍を発見し、慌てて後を追った。
時は西方歴2006年。図書館でハイデルランド興亡記を読んでいると、外の広場に古風な衣装の弾き語りを見つけた。彼が英雄譚を唄い始めるとあなたの意識は遠のく。気がつけば霧が立ち込める森で、先程の老人に介抱されていた。
PC5が図書館でハイデルランド興亡記を読んでいると外で老詩人が唄い始め、西方歴2006年から物語の世界である西方歴1061年に飛ばされる。PC5は森の中で先ほどの老詩人から介抱されており、彼と共に森人の村へ向かうとシーンを終了する。
PC4が紅公ガイリングから追放された直後、街道を紅公の兵が辺境へ駆けていく。兵の中にはデクストラらしき者たちもおり、通行人は近ごろ常軌を逸しているという紅公の行状について噂を始める。兵の行き先はエルフの居留地があるラクリマの森である。PC4がラクリマの森へ向かえばシーン終了。
PC3が夜道を旅をしていると森に火をつけようとしている賊と森人(いずれもエキストラ)が戦っている。彼らはPC3にも気付いて襲ってくる。賊を倒すと森人は礼を言い、礼として一夜の宿を申し出る。森人の集落に向かえばシーンを終了する。
PC2がアーグリフとの決闘を回想するシーン。ある戦場に出現したヴェルンフラム城の門前でPC2はアーグリフと戦い、魔神に膝をつかせた。アーグリフは約束通り、亡霊戦士の列からアルトゥルを転生の輪に解放する。
PC1は“傭兵伯”ゲオルグ・シュローダーと赤い眼鏡に赤いローブの男が何か話している様子、赤いローブの男がゲオルグの部下に炎を噴きだす装置を与えている様子、メオティアの森が焼かれていく様子、そして今まで無音だった世界に音がつき、アーグリフの名を呼ばわって魔神と契約し、森人たちを逃がすために亡霊狩猟団を独りで引き受けて戦死する騎士の姿を夢に見る。夢から覚めると、母のレナーテが心配そうな様子でPC1の傍にいる。目覚めたところでシーンを終了する。
舞台はラクリマの森にある森人の居留地。PCが集結したら対決ステージとなる。
PC1と顔を合わせると発生。
レナーテからPC1が父であるアルトゥルと同じように英雄としての道を歩み、手が届かない所へ行ってしまいそうなのが心配だと打ち明けられる。
紅公の密偵(エキストラ)に見つかる。密偵は紅公の軍に協力して生命の精髄を精錬するための森人を捕えれば、追放が解かれるどころか前にも増して公の覚えが目出度くなるであろうと誘惑してくる。
詩人が、かつてメオティアの森を焼き払う惨劇が起きた時、それを止めようとした騎士がアーグリフと契約して森人たちを逃がした話をする。そして彼は、また同じようなことがあり、勇者が望めば魔神は力を貸すはずだと言う。
村の広場に火達磨の村人が飛び込んでくる。水をかけても燃え続けるばかりであるが、【知性】、〈事情通〉、〈錬金術〉などの判定に成功した場合、この炎が錬金術で作られた水の中でも燃え続るイドリア人の炎であり、土をかぶせれば鎮火することが判明する。鎮火させれば村人は一命を取り留める。これはヴィルムが起こした[悪徳]である。
レナーテがヴィルムの話を聞くと、激昂して壁にかけてあった弓を取る。しかし、彼女はメオティアの森が焼かれた時の戦いで筋を痛めているため、矢をつがえることができず、取り落としてしまう。
紅公の軍勢が焼き討ちを開始し、デクストラトループ(20名×2トループ)を従えたヴィルムが森を焼きながらやってくる。
ヴィルムは復活系奇跡を使い尽くしたラウンドに、∵封印∵を逆位置で∵紋章∵の正位置として用い、エキストラである森と森人を焼き尽くそうとする。この時、PCが望めばアーグリフによって《魔王の印》が与えられ、∵奇跡∵を相殺できる。だが、そのPCにはアーグリフの《花押》が刻まれる。
水や嵐の中でも燃えるイドリア人の火と、それを利用した道具を使う錬金術師。炎に魅入られており、ゲオルグ・シュローダー傭兵伯に接近して、メオティアの森を焼き払うための道具を与えたこともある。
現在はケルファーレン公ガイリングの侍医であり、森人を焼き払ってフルキフェルの力が凝縮された生命の精髄を精錬しようとしている。
外見は白髪に白髭の好々爺然とした顔に、赤い丸眼鏡をかけ真紅のローブを着ている。
ヴィルムを倒せば[聖痕の解放]が起こり、森や森人がどうなっているかには関わらずシナリオは終了となる。PCがアーグリフと契約した場合、魔印はルールブック通りにアクト限りとするのが良い。また、このアクトおける紅公ガイリングは闇に堕ちているエキストラであるため、終局ステージの演出でPCが倒しても構わない。
西方歴1061年、ケルファーレン公ガイリング死去。晩年は執務を執っていなかったことからハイデルランド興亡記には持病の悪化が原因と記録されているが、狂死や暗殺など異説も多い。
死と前後して巷間で彼が魔神に憑かれているという噂が囁かれ、これを題材にした戯れ歌が数点残っている。これらを読み解くと、彼が累代の家臣を退けて在野から多数の部下を登用したことによる政情不安がこの時期では広い層まで及んでいたことが伺われる。
天慧院出版部『ハイデルランド興亡記検証』