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ZHing-YsthK-annn:
ズヒィング=イスクハカ=アンンン、
下級の独立種族

「ロマールの民は『それ』を喰って生き残ったんだ」

整った、あまりにも人間的すぎる彼の顔が現代人の想像を越える悪徳に対する嫌悪で歪み、部屋の隅に転がった肉塊を一瞥する。

「旧ぶるしきものに対抗するために、旧ぶるしきものを喰ってね」

僕は御免だ。彼はそう言い、ソファに身を沈めた。

K・アグリプス,"山荘にて"
K.Agripus,"in Retreat"

『苗床より沸きいづるもの』『巻き取られし肉』などとも呼称される、円筒状の太さ20cm、長さ1m程度の肉芽です。屍食教典儀によれば南の魚座にあるフォーマルハウトと関係が深いとされていますが、定かではありません。

ロマールの没落期、迫り来る極寒より逃れるために魔道師達が空間交換により地球中心より招来した『語ることすら恐ろしく不遜で穢らわしい存在』『人類開闢の遥か以前から実存する原罪そのもの』である『苗床』から生える『火なる羊』です。魔道師達はこれを刈り取り、その生命と呼び習わすにはあまりに不自然な幾何学的形状の肉塊を薄く削り、中央部になだらかな突起を有し非ユークリッド的形状の鍋状祭器を用い、寒さに耐えるための食餌として市民に供したと考えられています。

ロマールが滅び、人類が数回の失楽を経て以降も我々の集合的無意識下に存在する記憶により、世界各地で似たような料理を食することができるでしょう。

ナコト写本、エルトダウン陶片などにその記述を垣間見ることができますが、屍食教典儀の1728年ドイツ語版に誤謬が多いながらも最も詳細な記述があるとされています。

ズヒィング=イクスハカ=アンンンそのものはただの肉塊のような存在ですが、食べることにより冷気によるダメージを半減させる耐性を得ることができます。しかし、<ズヒィング=イクスハカ=アンンンの処理>の呪文を使って形質を変化させず食べた場合、食べた動物の体を苗床にして一日あたり1D4のズヒィング=イクスハカ=アンンンが生え、生えた数と等しいCONを失います。この光景を目の当たりにした探索者は、1/1D6+1の正気度を失います。

ズヒィング=イクスハカ=アンンン、
苗床より沸きいづるもの

能力値 ロール 平均値
STR 2D6 7
CON 3D6 10-11
SIZ 2D6 7
INT 1D6 3-4
POW 3D6 10-11
DEX 1D6 3-4
移動 1D6 3-4
耐久力 N/A 17-18
平均ダメージ・ボーナス
-1d4
武器
体当たり 30%,ダメージ 1D4
装甲
なし
呪文
なし
正気度喪失
ズヒィング=イクスハカ=アンンンを見て失う正気度ポイントは、0/1D4です。

呪文

ズヒィング=イクスハカ=アンンンの処理
ズヒィング=イクスハカ=アンンンを食べられるよう処理するために使用される呪文です。この呪文は10マジックポイント、1D4正気度ポイント及び5分間の時間を費やし、その間対象が術者の視界の中にいなくてはなりません。対象が生きている場合、対象のPOWと術者のPOWとの抵抗ロールを行います。対象が抵抗ロールに失敗した場合、それらは直ちに生命活動を停止します。また、この呪文はズヒィング=イクスハカ=アンンンの苗床になったものに巣食うそれの生命活動を停止させることもできます。

蘊蓄

このマイナーな種族は1966年に早逝したアメリカの小説家、ケイ・アグリプスの『山荘にて』で初めて世に紹介されました。作品内では円筒状をした一抱えほどの肉塊と表現され、吹雪に閉ざされた山荘と、その中で追い詰められていく住人達に闇を落とす役目を与えられており、作中ではクラーク・アシュトン・スミスに傾倒していたというケイの作品らしくウボ=サスラめいた『苗床』の存在がほのめかされましたが、この作品ではズヒィング=イクスハカ=アンンンが紹介されるにとどまり、滅びに向かうロマールや『苗床』は作品の底流に流れる不気味さを演出する小道具にすぎませんでした。しかし、ケイの遺品である創作用のノートには、ロマールの滅亡を描いた作品の構想が書かれており、この作品を発端とする神話作品の創作に意欲を燃やしていたことがうかがえます。また、[more]

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