D&D買い物ガイド Ver.2021 Summer
『フォーゴトン・レルム探訪』でフォーゴトン・レルムの地を踏んだプレインズウォーカーの皆さん、ダンジョンズ&ドラゴンズの世界へようこそ。
この記事では、『フォーゴトン・レルム探訪』をきっかけにD&Dを手にしてみたいと考えたあなたのために、さまざまな製品を解説している。
基本はゲームをプレイする視点に立った解説だが、レルムを知るための資料としての視点でも若干補足がある。あなたが買い物をする手助けになれば幸いである。
スターター・セット(あれば)
『スターター・セット』には1レベルから遊べるアドベンチャー『ファンデルヴァーの失われた鉱山』(もちろん《ファンデルヴァーの失われた鉱山》のカードの元ネタ)が入っており、それをプレイするために作られたキャラクター、そしてゲームの進め方や判定についての冊子も同梱されている。
アドベンチャーの出来は良く、助言も豊富でダンジョン・マスターの経験のない人でも取り回しがしやすい。これだけである程度遊べてD&Dはどんなゲームかがわかる、とてもいいセットだ。
ではなぜ見出しに(あれば)と書いているのかというと、実は2021年6月現在、このセットは版元在庫切れで、流通在庫のみだからだ。
ベーシック・ルール
D&D第5版は、ルールブックの基本的な部分を抜粋した『ベーシック・ルール』が配布されている。日本語版はホビージャパンの公式サイトで手に入れることができる。
『ベーシック・ルール』には基本的な種族、クラス、装備、そしてモンスターに魔法のアイテムが収録されている。挿絵が省略されているので、数多くのビジュアルによって伝えられるイメージは書けてしまうのは残念だが、これだけでもある程度遊べるようになっている。
プレイヤーズ・ハンドブック
D&Dのルールブックは分冊形式になっていて、『プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)』には、キャラクターを作ってプレイするためのルールが収録されている。
この本の中にはウィザードやファイター、パラディンやレンジャーなどのクラス。エルフやドワーフ、ドラゴンボーンなど親しみ深いものからちょっと変わったものまでをカバーした種族。キャラクターの人生を彩る背景、ファンタジーの冒険に欠かせない装備など、さまざまな設定とデータが、豊富なイラストと共に掲載されている。
D&D第5版で種族やクラスについての解説は、ただし書きがない限りフォーゴトン・レルムに基づいているので、一種の設定資料集としても楽しめる。
ダンジョン・マスターズ・ガイド
『ダンジョン・マスターズ・ガイド(DMG)』は、D&Dのゲームにホスト役として参加するDMが、自分で世界やアドベンチャーを作ったりする時に参照する本だ。厳密なルールというよりは、D&Dの世界がどのように成り立っているか、迷ったらどうすればいいのかを解説する、世界の設定資料やヒント集としてのおもむきが強い。
また、『DMG』には大量の魔法のアイテムが収録されている。もちろんその中には、《ポータブル・ホール》や、《ヴォーパル・ソード》など、『フォーゴトン・レルム探訪』に収録されたものもある。
モンスター・マニュアル
冒険者の愛しい敵役、モンスターを多数収録さたのが『モンスター・マニュアル(MM)』だ。ゴブリンやオーク、ドラゴンなどの定番モンスターから、ビホルダーやラスト・モンスター、マインド・フレイヤーといったD&Dならではの奇妙な存在まで、数百種がページの間でうごめいている。
もちろん、ここからも大量のモンスターが『フォーゴトン・レルム探訪』に登場する。 一種の怪物図鑑としても使えるので、架空の生物史が好きな人にはこれがおすすめである。
D&Dの製品分類について
D&Dでは『PHB』、『DMG』、『MM』の3冊が基本ルールやコア・ルールと呼ばれる中心的なルールブックになっている。その他の製品は、より深い世界の解説を行なったりデータを追加することが目的のサプリメント、そこに書かれているシナリオを使って冒険をプレイするためのアドベンチャーに大別される。
次の項からは、サプリメントについて解説する。
ソード・コースト冒険者ガイド
D&D第5版の主な舞台、フォーゴトン・レルムのソード海沿岸地方、ソード・コーストの設定集が『ソード・コースト冒険者ガイド』である。
ファンタジー世界ならではのさまざまな種族の暮らしぶりや、星々のように存在する神への信仰など、フォーゴトン・レルム全体についての記述もそれなりにカバーされている。
フォーゴトン・レルムの世界について知りたいのだという人には、この本がおすすめだ。
ザナサーの百科全書
《ギルドの重鎮、ザナサー》が集めた知識の数々といったていで書かれたサプリメントが、『ザナサーの百科全書』で、内容は追加データ集になっている。《夢の円環のドルイド》が属する夢の円環などは、この本で追加されたものだ。
また、キャラクターの生い立ちや名前を決める表、日用品に近いゲーム上の強い効果を持たない魔法のアイテムなどもあるので、D&Dが提示するファンタジー世界の生活感も見ることができる。
2021年6月現在、版元品切れ、流通在庫のみとのことである。
ヴォーロのモンスター見聞録
《モンスター見聞家、ヴォーロ》が見聞きした情報を書いた本という設定を持つ、モンスターについてより掘り下げるサプリメントが、『ヴォーロのモンスター見聞録』である。
前半部は『MM』でも紹介されたゴブリン類やジャイアント、オーク、マインド・フレイヤーなど、独自の文化、文明を持つ種族の人生哲学や生態を掘り下げる内容、後半部は、新しい(よりモンスター寄りの)プレイヤー・キャラクターとして使える種族や、新モンスターの紹介になっている。
モンスターの信仰や共同体のあり方などについて踏み込みたい人には一読をおすすめする。
モルデンカイネンの敵対者大全
多元宇宙に存在するさまざまな対立を軸に、《アヴェルナスの大公、ザリエル》が堕天した原因でもあるデヴィルとデーモンの流血戦争や、エルフと《蜘蛛の女王、ロルス》が支配するダーク・エルフなどを論じた書物で、モンスター関係サプリメントの第2弾。こちらの本には、多元宇宙を股にかけるウィザード、《モルデンカイネン》のメモがそこかしこに見られる。
この本はフォーゴトン・レルムの物質界から離れ、多元宇宙のさまざまな次元界がテーマになっているため、デーモン・ロードや地獄の諸侯など、冒険の背景で暗躍したり、高レベルのキャラクターと相対する存在も詳しい設定とデータが紹介されている。
アドベンチャー
D&Dをプレイするには、物語の筋書きやダンジョンの地図や、そこに住むモンスターたちを書いたシナリオやアドベンチャーと呼ばれるものが必要になる。
『DMG』や『MM』を参考に自分で作ってもいいのだが、第5版では多くのアドベンチャーが出版されてもいる。ここでは、それらについてご説明しよう。
これらのほとんどはオフラインでも数回~数十回の集まりでクリアされることが想定されているため、1つ買えばかなり長い間楽しめる。
魂を喰らう墓
ソード・コーストの南方、密林生い茂るチャルトを舞台に、キャラクターたちは命をむさぼる死の呪いの謎を追う。熱帯の酷暑と湿気、そしてじめじめした沼地など、環境との戦いも重要になる野外の大冒険だ。もちろん《魂を喰らう墓》の元ネタである。
ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え
キャラクターたちはソード・コースト随一の大都市ウォーターディープで、犯罪組織の抗争や貴族の陰謀に巻き込まれながら生きていく。そのような生活の第一歩を描くようなアドベンチャー。
何回かプレイすることも可能なギミックや柔軟性もあるので、DMを持ち回りで何周か遊ぶのも面白いだろう。
ウォーターディープ 狂える魔術師の迷宮
ウォーターディープの地下には、アンダーマウンテンという何階層もある大ダンジョンが広がっている。《狂える魔道士の迷宮》で冒険したプレインズウォーカーもいるだろう。このアドベンチャーは、そのダンジョンについて書かれたものだ。
『ウォーターディープ:ドラゴン金貨を追え』を終えたキャラクターたちが挑めるレベルから始まるので、続けて遊ぶことも可能。
バルダーズ・ゲート:地獄の戦場アヴェルヌス
フォーゴトン・レルムの無法犯罪都市バルダーズ・ゲート。そこにキャラクターたちが着いたところから物語は始まり、腐敗と暴力の中で己の善を、正義を試される地獄行の大冒険が始まる。
《アヴェルナスの大公、ザリエル》に大きくフィーチャーしたアドベンチャーである。
その他
この他にもD&Dのサプリメントはあるが、フォーゴトン・レルムとの関係がないので割愛……するのもなんなので、一応紹介しておこう。
『大口亭綺譚』は、かつての版で出た名作アドベンチャーを集めたアンソロジーで、ウォーターディープの酒場、大口亭で夜ごと語られるほら話ということになっている。
『エベロン冒険者ガイド』は、フォーゴトン・レルムとはまったく異なるスチームパンクっぽい世界のエベロンを舞台にD&Dを遊ぶための世界設定のサプリメントだ。
また、ルールを要約したダンジョン・マスターズ・スクリーンや各種カードなど、サプライも売られている。
おわりに
というわけで、以上が第5版の製品についての概説である。
最後になるが、この中からどれか1冊選ぶならという観点でおすすめをご紹介しよう。
TRPGという遊びについてつかんでいきたいなら、『スターター・セット』。あるいは『PHB』を。
アーティファクトの元ネタを知りたい人には『DMG』をおすすめする。
D&Dならではのクリーチャーの生態が知りたい人には『MM』だ。
フォーゴトン・レルムの世界設定を知りたい人なら、『ソード・コースト冒険者ガイド』がベストだろう。
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