正門 > 戯の間 > D&D > シナリオ作成入門 > はじめてのシナリオを書こう ]

シナリオ作成入門
はじめてのシナリオを書こう

ウォルフガング・バウアー著

君が始めてRPGのシナリオを書くつもりか、既にあるシナリオを改造するつもりなら、これほど適切な記事はない。『シナリオ作成入門』では冒険の導入から背景の情報、罠から財宝まで、全てを提示するだろう。

僕は今回、君が望む壮大なシナリオを書く基礎について教えるわけだが、その内容は背景設定でもなければ、ステータス・ブロックでもなく、敵役でもない。まずはモンスターの選び方であり、シナリオの分量と文法を理解することだ。

君の構想はどのくらいだ?

ウィザーズ・オヴ・ザ・コーストのデザイン・スタッフは、典型的な冒険者パーティが同じ遭遇レベルの遭遇13回をこなしたくらいでレベルが上昇することを目安としている。君が数レベルにまたがった冒険を作りたいなら、それはなかなかの大仕事になる。

冒険の途中に何回もの遭遇が続けば、パーティのレベルはは途中で上昇するだろう。彼らはより強くなり、多くのことが出来るようになる。君が彼らに用意するシナリオもまた、成長に合わせてより規模を大きくすることが必要となる。もちろん、シナリオの規模はだんだん壮大になるほうが良い。しかし、君がPCにそれ以上レベルを上昇させたくない時、君は遭遇の回数を少なくするなり、遭遇レベルを低くすることでレベルの上昇を抑制することができる。

しかし、しばしば君が用意した遭遇の中でも使われないものが出てくるだろう。いくつかの場所は調べられず、それなのに全ての遭遇が戦闘に繋がるわけでもない(忍び込まれたり、呪文やわいろ、そしてロールプレイで手打ちになったり切り抜けたりされる)。そう、君がPCにシナリオが終了した時にレベルを上昇させたければ、充分な選択肢を与えるためにもパーティと同じ遭遇レベルの遭遇を13回以上用意することが望ましい。

多くもなく少なくもない遭遇、一般的にはレベルが上昇するまでに20から25回の遭遇を用意するのが良いだろう。もっと低い遭遇レベルで行いたい場合は25から30回。毎週末に長いことプレイ時間を取れるなら、40から50回くらいの遭遇を準備して半分くらいで次のレベルに上昇させたっていい。短い時間で行うセッションの場合、君は手ごたえのある3から4回の遭遇を確実に行いたいだろう。

さあ、君は何回の遭遇を用意すればいいか理解できた。では、何をその遭遇に盛り込めばいい? そして、君はどんなまちがいに注意すればいい?

よくあるまちがい

シナリオを作っている時に陥りやすいまちがいはよっつある。僕はDungeon Magazineで仕事をしている時にいつもそれらを見てきたが、一向にそこは変わらなかった。

  1. 役にたたない背景設定。
  2. 遅すぎる展開。
  3. ランダムな遭遇。
  4. 多すぎる、あまりに多すぎる遭遇。

それぞれの手直しは簡単だ。ここから、君にそれを解説する。

簡単な背景設定:ほとんどのDMとデザイナーは目を背けているが、歴史や背景設定に凝るのは無駄骨だ。プレイヤーは誰が墳墓を盗掘したか、ウィザードが弟子からいかにして裏切られたか、アサシン・ギルドがどの勢力に鞍替えして雲隠れしたかなんて調べやしない。過剰な背景情報は伝説や伝承にご執心のバードや学者を喜ばすだけで、ゲームのプレイを豊かにはしない。現在の事件につながりがあり、PCが調べられることだけに絞って、残りは資料集のためにとっておきたまえ。

これは何も、全部を切り捨てろと言ってるわけじゃない。ある派閥の目を別に向けさせるための情報、どうやれば見張りにわいろをつかませられるか、もしパーティが黒幕を止めなかった場合、何が起こってしまうのか。これらを決めるのは全くもって正しい。背景設定は現在起こっていることに関するものだけにして「そう、あれは千年前の……」をやめようというわけだ。

導入は素早く:プレイヤーがゲームの卓につくと、ダイスを振りたそうに見つめている。君はすぐに直接的な事件を起こすことで、彼らの注意をピザやその他の魅力的なものから、ゲームへと向けさせることができる。簡単な戦闘なんかはゲームの頭ごなしにぴったりだ。遭遇レベルはPCのそれより1低いくらいが丁度いいだろう。

最善な“流れに飲まれている”導入は、全てのPCに謎を投げかけ、パーティを冒険へと向かわせる。たとえば、パーティは盗賊たちによって彼らが一夜を過ごそうとしていた宿屋が襲われているのを見るかもしれない――そして、生き残りはパーティに盗賊を率いていた黒騎士の存在を話すのだ。または、クレリックが白昼堂々テレポートしてきた来訪者から誓いを破ったことについて責められ――堕落した教団の長老が大いなる力のため彼を生贄にしようとしていると告げられる。といった風にだ。この遭遇は重要なものではないが、パーティが陰謀を探る手がかりとなる場合もある。

僕はこのことについて、次に書く『冒険の導入』で詳しく述べたいと思う。

ランダムはやめよう:時間は貴重であるからして、君が作るシナリオに脇道やひっかけを入れる場合は注意せねばならない。ランダムな遭遇というものは、ぐずぐずするパーティをせきたてたり、プレイヤーのうっぷんを解消させて楽しませたり役立ったりすることはある。だが、もし冒険の本筋に繋がるならばそれらは全くの無作為ではなく、本筋の手がかりとなるよう作られるべきだ。それらが本筋に繋がらないのならば、君とプレイヤーたちは任務の達成や物語の終焉に関係ない時間を空費していることになるからだ。

余分な遭遇を整理する:もし君が凄くたくさんの遭遇を作っても、毎日プレイしない限り、プレイヤーは彼らのなすべき事を忘れるか、それらが達成できないのではないかと疑い始める。彼らはたくさんの細かい遭遇をこなし、重要な手がかりを見失うか、重要なNPCを無視するか、重要な部屋を探索せず書類を発見しない――これらは彼らが戦闘で疲れているからだ。地図の空いた場所をふさぐために遭遇を用意するなら、それはランダムであるほうがよい。いくつかの部屋は空であることも、プレイを速くする。

遭遇を吟味する:役者を揃えよう

実際の難関は遭遇のバランスを取ることと、パーティのメンバー全員に対して様々な挑戦を用意することだ。シナリオというものは、英雄が敵を打ち負かすことに収斂される(もしくは、無惨にやられてお家に帰るか)。

まずは、一貫性を持った雰囲気を作ろう。

物語や設定、集団といった存在は、モンスターの選択を主題に沿ったものとして簡単にしてくれる。主題は“人型生物の部族連合”かもしれないし、“砂漠の盗賊団”であるかもしれない。しかし、それによって選択肢を大きく狭めることができるはずだ。パーティのレベルに合ったクリーチャー単体を用意するというのは良くない。DMG49ページの遭遇レベル表を参考にして、小集団や一組、単体を組み合わせて使おう。

また、繋がりのある遭遇も考えてみよう。番犬なり見張りは遭遇レベルから見ると低いレベルの遭遇かもしれない――しかし、パーティがサイレンスの呪文や急所攻撃ですぐに倒してしまわないと次の遭遇はより難しくなるのだ。

クラスによって遭遇レベルを調整しよう

DMGの49ページには、簡単な遭遇、挑戦的な遭遇、とても難しい遭遇、圧倒的な遭遇がどの程度あれば良いか、直接的な助言がなされている。圧倒的な遭遇は少なくしようとかね。

これは良い助言だが、完璧にはちょっと遠い。君は20から25回の遭遇にもっと変化が欲しいだろう。以下で挙げられる遭遇の要素を含め、全てのクラスとプレイヤーに光が当たる機会を与えてくれ。

  1. 2回の技能を使う遭遇:これらは隠密行動か技能で突破することができるクリーチャーや障害だ。番人、城壁、崖、密告者、1回の急所攻撃で倒せるhpの低いクリーチャーなどである。
  2. 4回の純粋な戦闘:君には何も交渉する要素がなく、即座に戦闘できる戦闘要員が必要になる。適任はオーク、ウルフ、オーガ、ジャイアント――そして、ドラゴンだ。まずは待ち伏せ、突撃、蹴散らしなど戦術を考えておき、これらを攻撃ロールとダメージロールに加えて行うことにしよう。
  3. 2回の魔法的な挑戦:ノックやファイアーボールなど、秘術呪文使いが持つ力にで挑む挑戦を2回入れよう。これらは来訪者の弱点を知るといった知識的な挑戦や、〈呪文学〉や〈精神集中〉で魔法のアイテムを動かしたり不思議な印を破ったりすることも含まれる。
  4. 1回の信仰的な挑戦:パーティの信仰呪文使いに衛生兵以上の役割を持たせよう。少なくともひとつは、アンデッド退散や〈知識(宗教)〉、自然の知識(これは君のところにいる信仰呪文使いがドルイドの場合だ)を利用させる遭遇を用意しよう。
  5. 1回の謎解きか罠:複雑な鍵を解除させたり、古代の文書を解読したり、隠し扉を探したり。簡単でもいい、パーティのために謎解きか罠を用意しよう。君のパーティにローグがいない場合、〈知識〉判定を代わりに用意するといい。
  6. 2回のロールプレイを行う遭遇:社会的な能力もゲームの中では重要で、バードは後ろで楽器を鳴らしてるだけが能じゃない。ふたつくらいは社会的な技能、たとえばわいろや取引、気の利いた会話で切り抜けられる遭遇を用意しよう。たとえば、パーティが防衛線や見張りを迂回するための手がかりをある学者が知っているとか、共通の敵と戦うためにデヴィルと手を結ぶとかだ。
  7. 1回の貧弱な遭遇:これはパーティの脅威度より少なくとも2、欲を言えば3から4低いほうがいい。つまり、コボルドや山賊、スケルトン、野生の動物など《薙ぎ払い》や範囲効果のある呪文でたくさん倒せる敵の集団だ。英雄たちが敵の集団をばったばったと倒すのは楽しいからね。
  8. 1回の干拓地:“干拓地”とはオランダなどにある海を堤防で囲んだ陸地のことだ。ファンタジーの用語ではDungeon Magazineの135号で説明したように、現実の干拓地が波から守られていることに例え、冒険者たちが悪の手から守られてゆっくり休んで態勢を整えることができる場所を指す。指輪物語の裂け谷を思い出してみよう。君が準備するそれは、異邦人を嫌うエルフの樹上都市かもしれないし、ロープ・トリックの呪文が込められた道具によって作られた不思議なロープかもしれないし、契約によって宝を守護しているアルコン、あるいはドワーフの交易隊かもしれない。パーティが望むなら、そこでレベルアップの処理や傷を癒すことができるようにするのだ。
  9. 1回の大物:君はパーティが全滅しかねない危険な血で血を洗う遭遇をひとつ用意しておくべきだ。これはロールプレイを挟んでちょっとした交渉にすることもできるし、追いかけっこにも、こっそり通り抜けることも、パーティ次第でどう扱うかを決定できる――しかし、彼らが全ての遭遇において戦闘が必要なわけではないと理解していなければいけないが。
  10. 大いなる終焉:大団円の遭遇は、全ての締めくくりを行おう。黒幕やその腹心と、面白い戦闘オプションを提供する部屋や地形で戦うのだ。

これらおすすめの遭遇で、君のシナリオで起こる20から25回起こる遭遇のうち、17回は設定できる。そして、君はある内容を増やすことで簡単に残りを埋めることができる。たとえば、君と遊ぶプレイヤーが激しい戦闘を好んでいるとしたら、残りの遭遇を純粋な戦闘として準備できるわけだ。また、君と遊ぶ秘術呪文使いが魔法の決闘を望んでいるなら――もしくは、ローグが先行偵察をやりたがっているなら――それを遭遇に組み込めばいい。

英雄たちがそれぞれの長所を輝かせるためのシナリオは、みんなにとってより楽しいものになる。パーティの弱点を突いたシナリオは君が楽しいかもしれない。だが、プレイヤーは嫌になるだけだろう。彼らから呪文や急所攻撃、戦闘のために用意した道具を奪ってはいけない――それらは活躍するためのもので、楽しむために必要なものなのだから。そうではなく、彼らが長所を活かして輝ける挑戦を用意すべきだ。

グループに騎乗した騎士、弓使い、モンク、そしてパラディンがいた場合、彼ら向けの特殊な遭遇を考えてみよう。

  1. 騎乗した状態での遭遇。
  2. 遠隔攻撃の遭遇。
  3. 追撃、または逃走(DMG2(未訳)の57ページにある競走ルールなどを参考にしよう)。
  4. 名誉ある敵との一騎打ち。
  5. 呪歌が必要になる、バーバリアンが追跡する、レンジャーの得意な敵と戦うなど、クラスの特徴を生かした遭遇。

まとめに

シナリオはプレイしていて容易に楽しみを得られ、全ての英雄たちに輝ける機会を与えられるように様々な遭遇の状況を用意する。最も重要なことは、ステータス・ブロックの細部を詰めることではなく、遭遇の内容や敵が変化に富んだものであることだ。

著者について

ウォルフガング・バウアーは多くのシナリオをものしたライターで、Dungeon Magazineに『Kingdom of the Ghouls』や『Gathering of Winds』といったシナリオを投稿し、ウィザーズ・オヴ・ザ・コーストからも近日発売予定がある。彼はオープン・デザイン・ブログでシナリオの改造法や専門家の目から見た助言などを支援者に提供している。

©1995-2007 Wizards of the Coast, Inc., a subsidiary of Hasbro, Inc. All Rights Reserved.
正門 > 戯の間 > D&D > シナリオ作成入門 > はじめてのシナリオを書こう ]