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シナリオ作成入門
ちょっぴりの銅貨ときらめく宝物庫

ウォルフガング・バウアー著

プレイヤーはキャラクターの命と腕をかけるための理由をふたつ持っている。それは経験点とたくさんの戦利品だ。今回のシナリオ作成入門で僕たちは戦闘用装備、通常の財宝、ひねりの利いた財宝、魔法の財宝、財宝としての情報などを見ていく。

財宝曲線

まず、僕らは財宝曲線という考えを理解する必要がある。これを使うと財宝の規模が広がり、その遭遇レベルで通常得られる額より少ない財宝や、多い財宝を用意することができる。

全遭遇あたりのパーセント 見つかる財宝 遭遇レベル1 遭遇レベル3 遭遇レベル9
45% 少々の財宝 15gpまで 50gpまで 200gpまで
20% 半分の財宝 150gp 450gp 2250gp
20% 通常の財宝 300gp 900gp 4500gp
10% 倍の財宝 600gp 1800gp 9000gp
5% 宝物庫(通常の10倍) 3000gp 9000gp 45000gp

財宝曲線に書かれている通常の財宝は、表3-3:遭遇ごとの財宝表(DMG51ページ)と同じだ。その前後には少々、半分、倍、宝物庫とある。

財宝曲線を利用した場合、ほとんどの遭遇は少々の財宝になり、シナリオあたりの総額は通常の方法を使って財宝を出した場合と同じになる。少ない回数の宝物庫と倍の財宝でわずかな戦利品の分を埋め合わせよう――そして、それはプレイヤーたちにより大きな衝撃を与える。3000gp分の金貨と宝石、魔法のアイテムを見つけた1レベルのパーティは、10回300gpの財宝を見つけた場合よりも大きな衝撃を受けるだろう。財宝の規模に変化をつけると印象に残る大きな衝撃を用意できる上、ドラゴンの塒やら悪徳枢機卿の隠し財宝がどれだけのものか決めるのを楽にしてくれる。

財宝を隠せ、埋めろ

プレイヤーが〈捜索〉のランクを上げる理由として、財宝はしばしば隠されているというものがある。ならば、シナリオを面白くしたいDMは財宝の20%以上を隠すといい。そう、ドラゴンは金貨と宝石を積み重ねたものの上で寝ているけど、一番上等なルビーとサファイアは隠してあるかもしれないんだ。そしてホブゴブリンの将軍は多分、財宝に鍵をかけてしまっておく――もしかしたら、給料日以外は井戸の底に箱を沈めているかもしれない。

財宝を隠したり埋めたりしておくと、ゲームを遊んでいてふたつの問題が出てくる。ひとつはPCたちが〈捜索〉判定を成功できるくらいの技能ランクを持ってなきゃいけないということ(難易度は10+キャラクター・レベルの平均を目安にして、あまり高くしすぎない方がいい。ローグだけが〈捜索〉を最大ランクまで持っているような場合、それすら失敗する可能性が高いからだ)。

もっと大きな問題は、あまりに上手く隠しすぎることだ。誰も「よし、床板は全部剥がしたな。次は屋根裏と軒下だ」なんて手当たり次第探し回ることにゲームの時間を費やしたくない。この問題はロールプレイする遭遇と書類が助けになってくれる。パーティが悪人の手先を捕まえるくらい上手に立ち回ったら、彼は隠されたり埋められたりしている財宝の場所と引き換えに、命乞いをしてくるだろう。書類もまた役立つが、ほとんどの人は「俺の宝をここに埋めた」なんて書きはしない。いや、君が海賊映画を信じるのは勝手だがね。たいてい地図を書いた奴らにしか解らない暗号で肝心な所を隠して、見る者を混乱させる。君がプレイヤーたちのためにそういう謎解きを作るのは感心なんだが、それにはえらく時間を食ってしまう。僕は、〈解読〉技能やドワーフの種族能力である石工の感を利用することをおすすめするね。ロケート・オブジェクトの呪文なんかも冴えたやり方だね。もしPCたちが見つけたあるアイテムが宝物庫から持ち出された物のひとつだと知ったら(たとえば、敵の子分から聞くなどして)彼らはロケート・オブジェクトの呪文で全ての宝物を見つけることができる。彼ら自身のためにも、こういう仕組みを理解してもらおう。

もし君が財宝を埋めるなら、君は少なくともひとつふたつの手がかりをパーティが見つけられるようにしよう。それらは簡単である必要は無い。ちょっとした推理をすることで、満足感はより大きなものになるからね。君は財宝を渡すとき「ご名答、それはちょうど部屋の真ん中にあったよ」と祝福してあげよう。

偽りの財宝

財宝に見えて、本当はそうじゃない物がある。ここで挙げるのはそんな偽りの財宝、部屋に満ちる莫大な戦利品に見せかけ、実は売り払うことのできない物だ。部屋の入口を照らす輝きを放つ「ガラスの」宝石は、ちゃんと調べてみれば価値が無い。金と銀貨の山はほとんどが銀製といった具合の物たちだ。使うなら慎重にやろう。戦いに勝利しても手に入ったのはこういう物だと辛いからね。

偽りの財宝を調べれば、本当に価値が無いと判る。僕はこの種類の物を「挑戦的な財宝」と呼んでいる。それは本当に珍しいことだが、それでも苦労して持ち帰って売り払うパーティがいることと、最初に見たときそれを財宝と認識するか否かが挑戦であることにかけている。

挑戦的な財宝

高さ8フィートの樽に入った4トンのワインは、特殊な装備が無いと簡単に持って帰れないほどに重い。だけど、そういう物を偽りの財宝と呼ぶのはちょっと待ってくれ、挑戦を愛するプレイヤーたちもいるんだ。樽の中身を10の小樽に移せば――たちまちひと財産の価値がある古酒の出来上がりだ。そうしたらパーティは小樽を運ぶため、きちんとラバに馬具を着けないといけない。こうすれば、ひと仕事終えた彼らは年代物のワインで富を築くだろう。

石像が大きすぎて運べないって? そうじゃないかもしれない――シュリンク・アイテムの呪文とバッグ・オヴ・ホールディングを使えば、たちまちこの通り。ひと仕事終えたら市場に持っていける。もしもパーティが縮小系の呪文やスクロールを持っている時に彫像を見つけたなら、持ち帰って売り飛ばせる。多くの場合、アイテムが価値ある物であるならばプレイヤーたちは真剣になってあがき、仕事をする。DMである君は、その中でも「あがく」部分を強調しよう。ワインは山道を越えさせる必要があるかもしれない。シュリンク・アイテムの効果が切れると、バッグ・オヴ・ホールディングは壊れてしまうかもしれない! 財宝を配置するとき、それについてくる挑戦を考えてみよう。パーティは「動かずの」ミスラル柱をなんとかするという困難を乗り越えるよりむしろ、ドワーフ式溶鉱炉を現場に作り、溶かしてしまうことを選ぶかもしれない。

財宝がかさばるだけの物ばかりだった場合、PCたちは重量と戦うかもしれない。しかし、君が疲労や消耗するような試練(後をつけてきた山賊や盗賊騎士との遭遇)を用意しないなら、プレイヤーたちは財宝を持ち帰るために英雄を地獄へ送り込むことも厭わなくなるだろう。

財宝の鑑定

しばしばプレイヤーたちはあまり価値が無くても珍しい財宝を好む。だってその方が格好いいからね。たとえば、こういうもの。

これで100gpや銀の腕輪よりも驚きを与えられるかって? 実際、上で挙げたような財宝は他の金貨と同じくらいの価値しか無いかもしれないが、これらはもう少し印象に残り――〈鑑定〉判定の機会を与えることができる。

パーティにローグなんかの技能を使うキャラクターがいた場合、こういうものの鑑定で実力を発揮できる。作業の後、いくつかの貨幣はただの金貨で、いくつかの写本は忘れられた教団のだらだらした文で、いくさかのワインは良質の料理酢になっているかもしれない――全ての「財宝」が富をもたらすわけではないのだ。こういう財宝を配置する時、君は価値があるものとガラクタをまぜこぜにしよう。全部の壜が財宝だとしたら、パーティは〈鑑定〉技能の使いどころを学ばず――彼らは全ての箱を別の誰かに鑑定してもらえる町へ運ぶだけになるだろうからね。

もちろん、全ての印象深い財宝が珍しかったり、集めがいのある物だったり、高価だったりするわけじゃない。レンジャーや動物使いがパーティにいた場合、エールの入った樽や、村の飢えをしのぐだけのオーツ麦とライ麦、牡牛の群れ、優秀な血統に連なる貴重な繁殖用牝馬などを手に入れると喜ぶかもしれない。パーティが冒険で得た財宝で一番価値があるものを牝馬で、通常のウォー・ホースより10倍の価値があると判断した場合、余分な収入に値する――ほとんどのグループは戦利品に関して何の考えも無しに、ただ牝馬を売るだけになるはずだからね。

土地と地位

最も高価な財宝は現金や物理的な道具じゃない。事実、中世の資産家はお金ではなく土地や封建領地、地位をその拠所としていた。

これらのお金には替えられない財宝は、探検してまるで財宝のように見つけたり、偉大な王や貴族、都市国家が恩賞として与えることもできる。どちらにせよ、得るための条件は早めに用意しておこう。この手の財宝は大きな冒険を完全に成功させた結果与えられるべきで、脇道や部分的成功で与えるべきではない。

また、財宝は書きつけかもしれない。たとえば、家族の血統についての重大な情報などのようにね。その情報は、PCがある封土の継承権を持っていたり、有力貴族の私生児だったり、どこかの誰かがある称号の継承権を持っていたり(PCたちが教えることでその誰かは幸せになり、報酬を与えるだろう)。また、所有の証となる道具の所持が問題となり、それが真作であるか否かをアイデンティファイの呪文やバードのレジェンド・ローア能力で鑑定されることもあるだろう。ディテクト・マジックに反応しない凡百なしつらえの斧でも、それが一族の先祖や高名なドワーヴン・ディフェンダーが持ち、詩や物語の中で名前が伝えられている物ならばぐんと貴重になる。斧の来歴が知れればドワーフにとってとんでもない財宝となり、一族の主導権や王権を得るほどの力になるだろう。それが、ただの高品質なものにすぎなくともね。

封土とは何かって? 中世に家臣が封建領主から与えられていた土地のことだ。だいたい土地だったんだが、そうとは限らない。面白い封土としては、橋や河の通行料請求権、港で扱われる荷物への関税課税権などだ。ファンタジーの封土は、エルフの王国にある狩猟地だったり、ドワーフの鉱山、はたまた街で取引される魔法のアイテムへの課税権かもしれない。パーティはエルフやドワーフを助けたり、アーティフィサーを弾圧することで標準の財宝よりも大きな富を得ることができるかもしれない。

プロット・クーポン:情報、手がかり、鍵

バーバラ・ヤングは90年代の初め、彼女がDungeon Magazineの編集者だった頃にある種の道具や情報の事をプロット・クーポンと呼んでいた。これらは沢山の古いシナリオにあったもの(それと、恐らく今のビデオ・ゲームにも)で、パーティはこれらを集めるためのシナリオを続けなくてはならない。君も知ってるはずだ、地図を完成させるための断片、バラバラになった手紙や日記、魔法の水晶、そして色分けされた鍵だよ。かつて『Expedition to the Barrier Peaks』というシナリオが出たが、それは評判が悪かったものだ(このシナリオでは、色分けされたアクセス・カードだった)。

財宝としてこれらプロット・クーポンは酷いものだ。そして、PCたちがこれらを集めることと引き換えに、次の展開や大団円へと繋がる。これがプロット・クーポンと呼ばれるゆえんだ。これはパーティを予定された通りに動かす便利な手法だが、それは本当に無理矢理なものだ。シナリオが本当の本当にこれらの道具を集めないといけない場合以外(『Rod of Seven Parts』の例を考えてくれ)、こういう種類の「財宝」はやめよう。これらはデザインの怠慢で、プレイヤーは喜ばない。

まとめに

複雑なロールプレイを楽しむプレイヤーもいれば、複雑な戦闘が好きなプレイヤーもいる。しかし、みんな財宝が好きなことに変わりは無い。君がデザインするシナリオで出す財宝は、通常の財宝に加えていくつかのそうじゃないアイテムを含ませておこう。そうすれば、君のゲームはより楽しくなるだろう。

著者について

ウォルフガング・バウアーは多くのシナリオをものしたライターで、Dungeon Magazineに『Kingdom of the Ghouls』や『Gathering of Winds』といったシナリオを投稿し、ウィザーズ・オヴ・ザ・コーストからも近日発売予定がある。彼はオープン・デザイン・ブログでシナリオの改造法や専門家の目から見た助言などを支援者に提供している。

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