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シナリオ作成入門
地形、災害、罠

ウォルフガング・バウアー著

君はシナリオのためなら何時間もステータス・ブロックをいじり回すことができる。だが、君が少しの時間を割いて周辺の環境を整備しても、同じくらい楽しめてはるかに刺激的なプレイの体験を用意できる。結局、ファンタジーの本や映画で君が衝撃を受けたのは、モルドールの荒れ野がどうなっているかや、プリンセス・ブライド・ストーリーの火が噴き出す炎の沼を見たときだろう。どんな試練でも牙と剣をともなって訪れるとしたら、それは間違いだ。

外的な環境はまさに遭遇の幅を広くするのにうってつけだ。ローグには技能を活躍させる見せ場を与え、ファイターには戦闘で戦術を駆使する機会を与え、そして――そう、わかってる。秘術や信仰呪文使いは罠や特殊な地形が苦手だ。彼らはある種の魔法的な罠と危険を解除することができる。それは普通、スクロールと聖印に関するものだ。

君はデザイナーとして、外的な環境をデザインすることでシナリオに深みと豊かさを与えることができる。僕はこれらの環境が、挑戦的な移動や物語の演出などを広い範囲で提供できると考えている。では、これからそれを見ていこう。

パーティ全員が楽しめる地形を

災害や地形はぱっと見が危険なものじゃなくてもいいし、それらの面白みはローグの技能が無くても楽しめる。見た目が安全そうに見えるものに関しては、本当に大丈夫かどうか〈生存〉判定が必要になるかもしれない。レンジャー、バーバリアン、そしてドルイドはこういう地形から起こる危険を切り抜ける術を持っている。

最後のものは脱出に〈跳躍〉判定か【筋力】判定が必要なため、ファイターの強運が試されるものになる。

こうやって挙げたものは全て、戦闘により多くの選択肢をもたらすために既存の遭遇へ組み込むことができる。実際、ミニチュアを使った戦闘はそういう危険を念頭に入れて戦術を構築すべきだ。たとえば、敵を突き落とすための熱せられた泥沼、大量の蛇がいる落とし穴に向かって傾いた床、そしてPCの足下で崩れ落ちる地面(そして全て崩れてしまう)。戦闘を楽しむための障害や危険は〈登攀〉、〈跳躍〉そして〈水泳〉など、ファイターのクラス技能で設計すべきだ。そしていくつかは魔法的なものがいい(魔法の霧、ガーズ・アンド・ワーズの呪文、永続化されたクラウド・キルの呪文、ルーンなど)。呪文使いはそれらのオーラを感知して解除することができる。

ここまでで言いたいのは、危険や罠の対処はパーティのローグが独占するものではないということだ。精密な魔法や機械の罠は解除するためにローグや秘術呪文使いが必要だが、だれでも〈視認〉にいくらかランクを振っていれば岩のぐらつきやジャイアントがパーティを埋めるために地すべりを起こそうとしているのを確認することができる。レンジャーは落とし穴の近くにある足跡でそれに気付くかもしれないし、ドルイドはバリスタの罠を解除したり、城門の閂を開けるためにワープ・ウッドの呪文を使うかもしれない。君はデザイナーとして、地形や罠を「ローグだけのもの」から解放することができる。

災害や地形で意思疎通

もし君がシナリオの地図にマグマの沼や死霊の霧で特殊な方向性を持たせたならば、パーティはそれを乗り越えることが割に合わないと考えるかもしれない。しばしば、それは君が望んでいることと一致する。「激しく炎を噴き出す壁が左の通路にあり、右には闇が広がっている」と言えば、君は他の方法より簡単にある方向へと誘導することができる。君は分かりやすい地形を使ってパーティに助言を与え、意思表示ができるのだ。

たとえば、ある外方次元界で地面にびっしりとカミソリヅタが生えている状況というのは、「そっちには行かないでくれ」とDMが意思表示をする手っ取り早い方法だ。パーティにはその上を飛べるフライの呪文があるかもしれない(それとも、もっと別の方法が)が、パーティはhpを消耗してキュア系呪文をいたずらに消費したくないだろう。もし君が特殊な地形でパーティに意思表示をしたいなら、露骨なもののほうが分かりやすい。

ただし、露骨な手が毎回使えるわけじゃない。しばしばパーティは、障害を凄い財宝がある証しや、「あそこがシナリオの舞台か」と考える。この深読みは、パーティが全ての行き止まりを探索しきるまで続きがちだ。君は彼らがそこに何も無いと確信するまで資源を使わせつづけてもいいし、読み違えだと告げてもいい。

読み違えを告げるのは親切なNPC、地図、そして別の場所を示す手がかりだったり、危険地帯を抜け出すことで――そこに何も無いことが判る。次に彼らが来る時は、棘々森や死の霧へ踏み込む前の偵察や調査に力を入れるかもしれない。これでPCたちは困難な道のりがしばしば困難のための困難であると学習するだろう。頭が回るパーティたちは彼らの力を不明確な目的に費やすことを避けるようになる。

物語を演出する災害

もし君がパーティに用意している困難な地形を避けられたくない場合、どうすればいいだろう? まず君はそれを予測し辛くすることができる、物語として楽しくすることもできる。そして、困難を克服することが目的であると断じることもできる。君は驚かせる地形、物語のある地形、誘い込む地形を使うことができるのだ。

驚かせる地形:流砂と雪崩、落石と火砕流、周囲から起き上がってくるアンデッドの群れ、そして天井から降ってくる槍とグリーン・スライム――これらの共通点は何だろう? それは、PCたちがそこに来るまで知らないかもしれないことにある。

驚かせる地形との遭遇は、D&Dにおける「だまし」であり、ホラー映画のショッキングな場面だ。それはまさに、パーティをちょっと怖がらせ、冒険の緊張感を高め、そしてPCたちに次の一歩を爪先立ちで踏み出させることになる。ただし、罠が流れを遅くすることに気をつけてくれ。罠と災害を有効に使いたいなら、君はそれを一気呵成にプレイしないといけない。事情聴取のようにやってはプレイヤーたちがだれてしまう。「きみはかちっという音を聞き、罠は解除された――ちょっと待ってくれ、僕は上を確認する」これはある種の緊張を作るが、けして誉められた方法ではない。ゲームは停滞と紙一重なのだ。そしてその間、人々はポテトチップとソーダを求めてさ迷うだろう。

これを回避するには、ゲームの前に見直しをすることだ。窒息、突き飛ばし、深雪、などなど特別なルールのページ数を書いておき――栞やコピー、SRDから君のシナリオにそこを引用するなどは、もっと上手い。手早く動かせるよう遭遇の構造も熟知しよう。処理内容のひとつふたつを手早く音読し、必要な判定を告げた後に移動させよう。遭遇の内容に合うのりのいい音楽や効果音を流すのもいい。

これのどこがパーティの「ためになる」かって? これは場面を盛り上げる。彼らは認めないかもしれないけど、しばしば刺激は楽しみになるものさ。

物語のある地形:災害や他の「受動的な」地形はパーティに強力な物語を提供できる。たとえば、ステュクスの流れに流される記憶、滝や陥没で分断されるパーティ、そしてある広間では過去からの残響と声で満ちているかもしれない。それぞれの場所で、君はシナリオの流れをがらりと変えることができる。なぜなら、君は状況を操ってパーティの目的を変えたからだ。パーティは分断されたままか? 研究熱心なクレリックは囁きの広間で死者と話すか――はたまた非実体のアンデッドを呼ぶ危険性を指摘するだろうか? 地形の効果で起こることは、パーティに脇道のシナリオを行わせるほどの影響力がある。

物語のある地形がもたらすもうひとつの効用は、役者気取りや目立ちたがりのプレイヤーたちにまたとない機会を与えることだ。もし姫の周りが炎の湖に囲まれていたら、パラディンは彼女を助けるために立ち上がり――個人的事情から燃え上がるかもしれない。物語のある地形を作成するにあたって重要なところは、君が困難な物語と困難なセーヴィング・スローか技能判定を両方用意すべきところだ。1回の頑健セーヴィング・スローといくらかの炎によるダメージは劇的な「業火の結界」を演出するには一元的に過ぎるかもしれない。しかし、君がみっつほど文章を書けばはるかに効果的なものとなる。ひとつ目はキャラクターの挑戦が危険であることを告げる(「本当にいいの?」と聞くところだ)、ふたつ目はキャラクターが危険を乗り越えたところ、そしてみっつ目は成果を挙げたところだ。ひとつ目はしばしば聞くなじみ深い「君は炎の熱を感じ、ブーツがくすぶる臭いを感じる。それでも炎に飛び込むかい?」というようなものだ。

ふたつ目はちょっと難しい。キャラクターが自主的に向かったため炎によるダメージは自動的に命中するが、炎によるダメージを受けた最初のラウンドに、君は意志セーヴィング・スローを要求するかもしれない。屈強な男や消防士でさえ炎の中を歩くのには尻込みするはずだし、何人かのキャラクターは奮起できないかもしれない。「君の髪と眉は黒焦げになり、熱気でむせ返って目に涙が浮かんだ。炎の向こうまでかなりの距離があるように見える」と読み上げ、その後に誰かがセーヴィング・スローを成功させたら、彼はかっこいい演出をする権利を得る(そうしないと、他のプレイヤーは彼を馬鹿にするだろう)。

最後は事態がより悪くなるところだ。もちろん、キャラクターは炎のダメージ(たいした事のない)を予想しているだろう。それをもっと大きなものにするんだ。「君は床にたまっていたおき火にひざまで沈み、鎧や装備の紐と木製の部分には火がついて、視界も遮られてきた。これ以上進んだら、ブーツが燃え上がってしまいそうだ」もしPCがそれ以上進むなら、さらに炎によるダメージを与えたり、装備に対するセーヴィング・スローを行わせるとよい。そして彼がそれに耐え切れば、単に「君は炎によるダメージを10点受けて島まで辿り着いた」とするよりずっと価値があるものになるだろう。物語に複数の判定と多くの危険を付加することで、君は炎を潜り抜けることを印象深いものにできる。

誘い込む地形:その先に目的のものがあるガスの出るじくじくした沼、登らなければいけない高くて手がかりのない柱など、君が用意した巧妙で、致命的で、辛いセーヴィング・スローを求める場所を訪れたパーティは、それを回避する冴えた手を考えるだろう。誘い込む地形は普通、みっつの要素を必要とする。明確な報酬、費用の差、そしてPCたちがその費用を払うかどうか決める少々の時間だ。

例えば、聖剣がパラディンの神殿に隠されていて、善と悪の陣営はどちらもそこが安定した状態であることを望んでいる(もちろん、理由は異なっているが)。そこに誰かが訪れると、彼らは神殿全体をアルコンたちが警備し、剣そのものが近づくものを焼く聖なる炎に包まれており――炎が密かに持ち出そうとするデヴィルを焼き払うのを彼らは目撃する。さて、彼らはアルコンたちと戦いたがってるかい? そうかもしれない。彼らは聖なる炎に耐えようとしているかい? 彼らはそうするか、任務を成功させるために別の手段を見つけないといけない。この場合、パーティがアルコンたちと話をつける方向にこの場をデザインしたい――これは念入りに作られたロールプレイをする遭遇に通じる――だが、パーティは戦闘によって目的を達成しようとするかもしれない。そしてパラディンの幽霊は彼らのやり方を否とするかもしれない……

飛行という問題

多くの伝統的な罠は歩いている侵入者をターゲットにすることが多い。転がり落ちてくる岩、引き金となる床石、そして酸やダイア・クロコダイルで満たされた落とし穴。どんな飛んでいるクリーチャーでもそれを避けることができる。パーティの術者がフライの呪文を使えるようになると、城壁でさえそうなることが多い。

解決策? 飛んでやってくる侵入者のために、罠と罠職人を飛ばすことだ。

飛行対策の罠も、普通の罠と同じ要素、引き金とその中身だ。引き金は黒く塗られた壁から天井まで続く仕掛け糸、浮かんでいる種や羽、凄く細い蜘蛛の糸、そして触れると罠が発動する大量のシャボン玉。それらは範囲に対する引き金かもしれない、ある範囲を飛んだら、気流の乱れによって罠が発動する。または『リターン・オヴ・ジ・エイト』で魔術師テンサーの塔を守っていたブラッドホークの群れのようなものかもしれない。村人たちは飛んで近づいた侵入者が血に飢えた猛禽類についばまれ――その道を使うのは愚か者だけと知っている。

さて、飛行対策の罠に入っている中身はどんな物だろう? それらは毒ガス、ダーツの矢、クロスボウ・ボルト、そして爆薬かもしれないが、それらはいかにも平凡だ。なぜ光線呪文や、下にある棘に飛んでいるクリーチャーを押しつける下降気流、そして飛行する乗騎の翼を凍らせる雹まじりの嵐を使わないんだい? 普通の雲に見える致死性の胞子なんかも、飛行しているキャラクターに地面を歩いているのと同じくらいの脅威を与えられる。

飛行対策の罠や危険はひとつふたつが適切かもしれないが、設置はしすぎないように。パーティが君の仕掛けた落とし穴、ウェブの罠、そして粘体を避けるために多少なりとも資源を使って飛んでいるのなら――彼らは多少なりともPCの資源を消費しているのだ。

まとめに

地形や罠は多様性、物語、刺激といったものを迷惑な遭遇以上に君のゲームへと加えることができる。しかしそれは戦闘する遭遇を盛り上げるためや、危険な地形を使うことによって移動というゲームの部分を盛り上げたり、場所、危険、そして不思議といった雰囲気を冒険の舞台に与える意味があってのことだということを忘れないで欲しい。

著者について

ウォルフガング・バウアーは『Dark*Matter Campaign Setting』の共著者で、多くのシナリオをものしている。彼はオープン・デザイン・ブログでシナリオの改造法や専門家の目から見た助言などを支援者に提供している。

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