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キャンペーンのあらすじ

著:ジェームズ・ワイアット

私が連載の初回で強調した点のひとつに、キャラクターが知る範囲より広大な世界を準備する意味はないということがある。小さく始まった世界をキャラクターがより遠くまで旅をすることで自然にふくらませれば、その作業は素晴らしいものとなる。世界を設計するにあたり、私はこれが正しいやり方だと考えている。

だが、キャンペーン全体の計画を立てるとなれば、君は事前に準備することでより多くの利益を得ることができる。私はキャラクターが最初のダンジョンに足を踏み入れる前に彼らが30レベルまでに行なう冒険すべてを考えるよう薦めるのではなく、キャンペーンをつらぬくあらすじを大まかに書くことを薦める。始まりはどこか、途中に押さえるべきことは、そしてどこでどうやってそれが終わるか? 君が早めにその青写真を描くことができれば、君のキャンペーンの流れを決め、未来の冒険に成長する種を植える時間は簡単なものとなる。

私はここまでやってきた作業で、カカラの村とダンジョンでキャンペーンを始めるためのなかなか良い考えが浮かび、さらに私がキャンペーン間に提示する主題を印象づけることや焦点を当てたい要素――『Lords of Madness』『The Gates of Firestorm Peak』的な異形たち――を理解することを助けられた。さらに前回カカラ谷の起源について考えたとき、私はプレイヤー・キャラクターがゲームでエピック・レベルに達したときには、谷から逃げ出した炎のような存在を倒すか再び封印するかのいずれにせよ戦わせようと考えた。私は同じようにキャラクターが低いレベルのうちに谷をある程度探検させようと思っていたことも書いたが、その後も私が用意した他の異形と戦える適当なレベルで再挑戦させることにする。

こうして、私はキャンペーンのあらすじを書き始めた。

これはかなり強く異形の雰囲気を表に出したキャンペーンのあらすじである。こうして書き出したものを見て、私はふたつの隙間に気がついた。ひとつ目に、私は『Lords of Madness』にある素敵な異形を討伐する組織をひとつ以上キャンペーンに関係させたいということ。私はこれらの組織に関連した皆伝の道(paragon path)を設計してプレイヤーにオプションとして提示したい。そのためには彼らが11レベルになる前に私がプレイヤーと組織を邂逅させる必要があることを意味している。私は彼らの冒険オにカカラ谷へ再び向かう仕事を書き留める――組織は彼らを谷に再び向かわせるか、PCが谷を探検することで組織について知る。どちらの方法でも大丈夫である。

ふたつ目に、私は高いパラゴンか低いエピック・レベルのうちに、キャラクターをみたびカカラ谷へと向かわせたい。アボレスは高いパラゴン・レベルにちょうど良く、彼らはキャラクターが谷の最深部にやってくる時に適切な脅威となってくれるだろう。こうして隙間を少し埋めて、私は物語の要点をここにまとめておこうと思う。辺境にあるカカラ村の若者たちは恐るべき異形に直面し、彼方の領域から忍び寄るものを追い払うため大いなる門を封印し、最終的にはカカラ谷から逃げ出した恐るべき異形を打ち破る。

組織

このように私は異形と戦うことが主題となるキャンペーンをざっと考えてみた。私をそうさせた原因のひとつは『Lords of Madness』に収録された素敵な組織であり、私はゲームで彼らをどう利用するか少々考えることにした。この本で紹介されている3つの主な組織は異形と戦うことを専門とし、さらなる4つめの門派(蒼き印の守護者)も同じような役割を持つ。私はそれらをみずからのキャンペーン――ここは世界中でも異形の存在にたいへん影響された地域であること、そしてこれら組織の発祥は文明を彼らによる破壊から護るためであったこと――に適応させる。最後に、プレイヤー・キャラクターは私が考えている脅威から護るものでなければならず、そのため私はこれらの組織をキャラクターの成長に使って欲しい。『Lords of Madness』、ひいては3.5版ルールでは、それぞれの組織は上級クラスと関係している。私はおそらくこれらを材料にキャンペーンのキャラクターが組織とよしみを通じていた場合に習得することができる規範の道や特技に変換することになる。それらはプレイヤーが彼らのキャラクターを異形に対して特に効果的に成長させるのを助け、彼らにこの地で行なわれている永年の闘争を感じさせる。

真実の円(The Circle of the True)は自然の側に立ち、それらを穢して破壊する異形の力に対抗する。構成員の多くはドルイド、レンジャー、そして自然の力と繋がりの深い他のものたちである。プレイヤーズ・ハンドブック2が発売されれば、私は根源(primal)の力を使う他のクラスにまでその範囲を拡大するかもしれない。私はエベロンの門を護る者――このエベロンにあるドルイドの分派は長い間世界をダルキールの異形による侵略から護っている――から少々の要素を剽窃して真実の円に混ぜ込むつもりである。古からの伝統的な門を護る者のほとんどはより新しい組織に吸収されたが、荒野に棲むオークたちは純粋な門を護る者の道にのっとっている。これらのオークが他のどんなオークよりプレイヤー・キャラクターに親切だとは限らないが、彼らが彼方の領域へのポータル(たとえば紅蓮山(Firestorm Peak)のそれ)を封印するため、一時的ながらも真実の円に所属するプレイヤー・キャラクターと門を護る者のオークとの間に油断できない協力関係を築く可能性を作る。

聖別されし精神協会(The Society of the Sanctified Mind)はサイオニック能力を使う異形のクリーチャーと敵対し、他のクラスを持つ構成員と同じようにサイオニック能力を持つキャラクターが多く所属している。サイオニック能力はゲームで大きな部分を占めないため、私はしばらくの間この組織に触れないことに決めた。また私はそれを女神アイウーン(Ioun)に関連づけた上で、学級的な、その多くが書痴からなる社会へと再構築することにより地域で行なわれている異形との戦いの最前線から少し離れた場所へ取り除くこともできる。しかし、彼らはあらゆる異形の伝承についての完璧な情報源である。アイウーンは予言の女神でもあり、そのことは私にキャンペーンを通して予言的な主題を織り込むことを考慮させ――他に何もないなら、かつてカカラ谷の地下に束縛されている異形やその脱出、そして究極の破壊に関する予言は協会から知らされることになるかもしれない。

黄玉修道会(The Topaz Order)は神聖な騎士修道会で文明的種族を異形の怪物どもから護るために存在する。その献身は『Lords of Madness』においてはハイローニアスに捧げられていたが、私はそれを簡単にバハムート、モラディン、そしてペイロアを信仰する修道会に拡大することができる。私がカカラについてすでに考えている案に基づけば、黄玉修道会はおそらく村とその周辺でもっとも直接的な権威を持ち、キャラクターが真っ先に遭遇する組織であるだろう。

蒼き印の守護者(Keepers of the Cerulean Sign)は文明社会に暗躍する歪んだ異常な教団と敵対する孤独な個人である。私は彼らがキャンペーンの大きな部分を占めるとは思わないが、湖の町には異形を崇拝する者たちの教団があるだろう。キャラクターは都市でその脅威と戦うとき、守護者の助力をうけたり、守護者の一員となることができる。私は3版の冒険シナリオ『夢でささやく者』では狂気に冒されたエイリアニスト・ソーサラーの教団を使ったが――時がくれば私はその冒険シナリオからあらすじを利用させてもらうだろう。

穴を埋める

ここからは少々の多様性をキャンペーンの概略に加える時間である。プレイヤーは冒険人生のすべてを異形との戦いに捧げたくはなさそうだし、私も冒険を制限して遭遇のデザインをひどいものにはしたくない。ここに至るまで私は異形を主題とした冒険の明瞭な考えを持ってきたが、私はこれらを主題と関係ない冒険と混ぜ合わせる必要がでてきた。誰かが変化は人生の調味料と言っていたがそれは現実世界と同じようにD&Dにも当てはまる。

さて次に、私はささやかなキャンペーン用の地図と覚え書きに目を通す。カカラ村の周囲に最初の円を描くとき、私はいくつか冒険の案を出していた。

塔見の町:カカラ谷へ最初の遠出を果たしたあと、私はキャラクターたちを南のはずれにある古代遺跡の探検に向かわせる。我々はわかりやすい遺跡のダンジョン探検(私はそこにオークがいると考えている)を行ない、PCはこの遺跡が持つ名の由来である不思議な塔の中へと冒険を続けることができる。

塔の最上階が天文台としたらどうだろうか? 『The Gates of Firestorm Peak』の始まりを告げる客星が観測されたという情報の種を植えたり……または、遺跡のオークには伝統的な門を護る者の賢者が含まれておりキャラクターの将来を誘導するような重要な情報を伝え、より平和的に、門を護るオークと関われるようになるというようなことができる。

私はこの冒険でキャンペーンのあらすじに少々の多様性を持たせたいと思っているが、私がこれらの伏線を繋げられるなら、それはさらに良くなる。キャラクターはカカラ(村と谷)を去り、オークと戦いつつ私は彼らを塔へ登らせ、そして冒険の最後かその近くで谷の異形へ繋がる伏線を示す――これにより彼らはキャンペーンが進行していることを始めて自覚すると共に最初の冒険で群れていた異形のモンスターは仕組まれたものであったと気づく。

苦しみ峠;この名前は私にアンデッドを感じさせる。私は指輪物語にある死の道について思いを巡らせると共に、この峠に肉付けするときが来たらトールキンから露骨に剽窃するかもしれないと思った。私は以前の考えを撤回し、私は苦しみ峠が直接紅蓮山に繋がっているとはしないことにしようと考えた――恐らく同じ山脈には入れるだろうが。

これに近づくためのひとつの方法は非常に単純な“ここからそこまで行く”冒険で――いくぶんの楽しいことやそうでないことがキャラクターが次の冒険へと旅をしているときに起こる。彼らがカカラ地方にいる間、彼らは紅蓮山近辺の奇怪なものごとについて学びそれを調査すると決める。しかしそこへ行くためには、彼らは苦しみ峠の辛い道を抜けなければならない…… それは素晴らしいものになるが、プレイヤーは冒険を彼らが行いたい紅蓮山の調査を妨げるものと感じるおそれがある。改善方法としては彼らに峠へ向かうもうひとつの理由を与え、さらに紅蓮山での冒険への導入をもう少し仕掛けるためにこの冒険を使うか、キャラクターに山で発生した奇怪なことを感じさせる。それは私が門への冒険への前奏として、まさに皆伝の道の冒険が始まることを示唆できる。

シルヴァリームーン市:私はこの都市を地図に記録したが、それをどうするかという明確な見通しがない。シルヴァリームーン市は地方で最も大きな都市であるから、キャラクターが研究を行なったり黄玉修道会や聖別されし精神協会といった組織と関係するようになるには自然な場所である。しかし、私は今のところそれらを先送りにする。キャンペーンが予想外の方向へ流れる場合に備えて私は何枚かの覚え書きをしているが、キャンペーンがそうならない限り私はそれらにさらなる手を入れる必要はない。

エピック・レベル:ここまで自分の素描をざっと見て私が注目した大きな隙間は、キャラクターが紅蓮山での冒険を終わらせてから彼らがキャンペーンの終局にエピック級の異形と対峙する間のことである。私はアボレスがそのレベルだと覚え書きに書いており、キャラクターは三度カカラ谷へ向かって最深部を探検せねばならないことを示唆している。私はこれをアンダーダークへ至る長旅へと拡張しようと考えている。恐らくキャラクターは紅蓮山からカカラ谷へ地下を通って移動し、最終的には谷にある古代の異形が通った道をさかのぼって新たなねぐらを発見してそれに直面する。『モンスター・マニュアル』でエピック・レベルのモンスターを見ると、異形のモンスターでソードウィング(swordwing)とギバーリング・オーブ(gibbering orb)を発見したのでこの道行きに関わる敵としてアボレスに加えることができた。

ここまでで、私は幸せにこのレベルについての作業を放り出す。多くのことはこれから起こることで、キャラクターがそのレベルになる時まで、私は可能な限り新しい方向性、他の主題、そしてプレイヤーの欲求を受け入れたい。それはキャンペーンのあらすじとともに私の手を離れ、私が始めるところから作られるのである。

次回は、この道中を飾り立てることとキャンペーンを立ち上げることについての計画を行なう。

著者について

ジェームズ・ワイアットはD&Dのリード・ストーリー・デザイナーにしてD&D第4版リード・デザイナーのひとりである。彼は7年以上ウィザーズ・オヴ・コースト社に勤め、『エベロン・ワールドガイド』『City of the Spider Queen』、そして『Oriental Adventures』といった受賞暦のある世界設定や冒険シナリオの執筆や共同執筆に携わった。彼の最も新しい仕事は『Expedition to Castle Ravenloft』『Cormyr: The Tearing of the Weave』そして、『The Forge of War』である。彼の2作目となるエベロンの小説、『Storm Dragon』は、今月発売される。

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